2009年12月29日火曜日

富田林寺内町



富田林は大阪市の南のベッドタウンだ。あべの橋から近鉄南大阪線で30分ほどで着く。今年最後の時空旅はこの中世末に成立した一向宗の寺内町だ。こんな都心に近いベッドタウンの中に、タイムカプセルのようにこの一角だけ歴史的な景観が良く保存されている所がすごい。地区の総面積は約3万㎡で周辺部との境界には土手が巡らされていた。近畿地方によく見られる掘割が巡らされた環濠集落は低地に建設されているが、ここは高台に位置していて、集落の外縁部からは各方面とも道が大きく下っている。東からは下に石川を、遠くは葛城、金剛山が望める。当時は高台の要塞都市的な性格だったのだろう。

 富田林は、このように街の中心に今でもある興正寺を中核とした宗教自治としとして建設された。江戸期以降はそうした自治都市としての特権的な地位は失われたが,交通の便の良い地の利から在郷町と呼ばれる商業の中心としての発展を遂げた。ここ富田林寺内町は多くの木綿、油、酒等を商う商家が栄え、豪壮な町家が今でも良く残っている。

 こうした寺内町は,隣の大和の今井町が有名である。その建築物群の密集度と保存状態の良さなどの点では他に類を見ないが、ここ富田林は都市化が進む大阪の郊外でこれだけの景観が保存されている点が驚嘆に値する。近畿圏は総じて今でも長い歴史の上に人々の生活や文化、習俗、経済活動、町並みが成り立っていることにいつも驚かされるが、この富田林の寺内町はその象徴と言っても良いかもしれない。東京のような町は、江戸開府400年と言っても歴史的に見れば新興都市であることを認識させられる。