「ライカMにライブビュー」は、マウントアダプターの世界(これも邪道の極みなのだろうが)にも大きな変化をもたらした。これまでマウントアダプターというと、ライカのL、MマウントレンズをAPSサイズセンサーのFujifilm XシリーズやSONY Nexシリーズ、マイクロフォーサーズのボディーに付けて撮るためのアダプターであった。それが逆になり、フルサイズセンサーのライカMがマザーボディーになる訳だから、天地がひっくり返るほどの驚きだ。ライカMにニコンやキャノン、往年の銘レンズであるアルパやヤシカコンタックス、ひいてはM42レンズを付けて撮ると言う撮影スタイルが可能となったのだからビックリする。これまで、距離計連動カムがあるレンジファインダーライカMでは考えられなかったことだ。
ライブビューになったとたん、様々なライカの既成概念をぶちこわすことが出来ることとなった訳だ。すなわち、これまでのレンジファインダーライカMの制約から来るレンズの「三つの壁」を取っ払うことが出来る。(1)最短撮影距離1mや70cmという壁。(2)そして望遠レンズという壁。(3)さらにはズームレンズという壁。まるでフルサイズCMOSセンサーのミラーレスカメラになったようなものだ。
早速、まずはKIPON製のアルパアダプターをゲットして、保管庫に眠っていた我が家のお宝レンズ、アルパ用のケルンマクロスイーター50mmを着けてみた。これは最短30cm、三分の一倍まで寄れる標準マクロレンズだ。スイス製の一眼レフカメラアルパでのみ、そのとろけるようなアウトフォーカスに酔いしれることができた。フィルム時代以来しばらくお目にかかることが出来なかった画像にライカMでお目にかかれるという。久しぶりの高揚感だ。
ライカRレンズ用の純正アダプターもライカ社から出る予定だが、発売予定が、6月が9月になり、9月が11月になり、どんどん遅れているが... もっともM Type240自体が市場への供給が間に合わず受注停止状態だと言うから、Rアダプターを今出しても意味がないのかもしれない。何とも悠長な営業だこと。これでも顧客を失わない自信があるのだろう。ともあれ、このRアダプターが出ればRシリーズの望遠レンズやマクロレンズ、果てはズームまでMボディーで使用可能となる。これがライカ社の言う、Rユーザ対策だった訳だ。
ちなみに、定番のL/M変換アダプターだが、従来のElmar, Summitar, Summicronなどの無限大ストッパー付きレンズ用の干渉対策を施した半月切り欠き型リングは、Mボディー側の6ビットコード認識窓を塞がないため、Type240では「レンズなし」と認識し、撮影が不可能になる。対策としては認識窓に白い紙、テープなどを当てる必要がある。黒光りした精悍な顔に絆創膏貼ったような何とも間抜けな面相となるが。今後ファームウエアーで改善してもらいたいものだが、これもものすご〜く時間がかかるのだろう。Rayqualなどサードパーティー製で、6ビットコードを自分で設定できる(いや、ただ自分で黒い塗料を入れるだけだが)ブランクコードつきL/Mリングが出ている。今わざわざこれを購入する気にはなっていないが。
このように、保守的なライカユーザばかりではなく、ライカでもやっぱり便利なものは便利に使いたい、というデジタルカメラ世代のハイアマチュア層が形成されてきているのだ。こうして、ライカはMにこだわって距離計ファインダーにライブビュー機能を追加して、結局Mでなくしてしまったのかもしれない。このMはドイツ語のMessucher(距離計ファインダー)のMなのだから。しかしこうしたパラドックスが、またライカMを面白いカメラにしているのも事実だ。どうも製品の市場「合理性」は日本製デジカメのそれとは異なるようだ。しばらくこの底なし沼にはまり込んでみよう。
(旅のお供はライカM。定番のズミクロン50mmとともに)
(アルパのケルンマクロスイター50mm f.1.9をKIPONのマウントアダプターを介して装着。結構良い佇まいだ)
(ライカM+マクロスイターによる絞り開放での近接撮影。ライカMのライブビューでこのような新らしい撮影の世界が広がる)
(参考文献)
オールドレンズ・ライフ Vol.3 (玄光社MOOK) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2013-09-09 |