2014年7月3日木曜日

大阪中之島近代建築の華 ダイビル本館の復活

 久しぶりに大阪中之島に出かけた。大阪大学中之島センターでの学会に出席するためだ。ここにはその昔、大阪大学中之島キャンパスがあった。山崎豊子の小説「白い巨塔」の舞台となった大阪大学医学部はここにあった。大学は今は豊中に移転してしまったが、最近になって、大学の都心回帰で、旧キャンパスの一部にこの大阪大学ビルが完成した。

その大阪大学から空き地を一つあけて隣に、あの名近代建築ダイビル本館が見事に復活しているのに気がついた。タクシーで横を通ったときには気がつかなかった。それほど昔のままに復元されていて違和感が無かった。

2013年7月にリニューアルオープンしたダイビル。往年の風格を良く残している。

 
 2009年11月のブログ「新・大大阪の夢」でレポートしたように、この渡辺節設計、1925年大正14年竣工のネオ・ロマネスク様式の名建築ダイビル本館は、再開発の流れのなかで、惜しまれつつ解体されることが決まった。大正14年当時の大阪は、東京を上回る経済都市として発展した「大大阪」の時代である、中之島に位置するダイビルは、その大阪の繁栄のシンボルであった。解体当時から復元の計画はあったが、2009年にそのオリジナルの最後の勇姿をカメラに収めに行った。既に、その時は内部は閉鎖され、玄関ホールなどを見学するとは出来なかったので、外観だけをカメラに収めた(そのブログとスライドショーはこちらから⇨「新・大大阪の夢(堂島・中之島編)」

 復元手法は、最近流行の低層部分の外観ファサードを元のように復元し、その上に高層階を継ぎ足す、というもの。東京丸の内でも流行の再開発手法だ。しかし、このダイビル、オリジナルの貴重なスクラッチタイルや玄関の龍山石の列柱レリーフ、装飾パーツなどが破壊されず保存され、オリジナルに忠実に復元されている。よかった。一見、オリジナルとどこが替わったのかと思うほどだ。上を見上げると確かにグラスアンドスチールの高層ビルがのっかっている。中之島の水辺景観を大きく破壊すること無く、大大阪の風格を取り戻した感じがある。








レリーフの曲線が美しい。こんな建物はもう生まれない。
























 一階には、洒落たレストランやカフェがオープンしていて、ビルのオリジナルのデザインを損ねず、リバーサイドプロムナードにふさわしい佇まいとなっている。玄関を入ると、ホールはオリジナルの意匠が一部に再現されている。内部は現代のビルらしい機能的なデザインを取り入れているが、昔のテイストも残されている。オフィス棟(すなわち高層階)へ向うエレベータホールは、入口に黒いスモークガラスのドアがあり、一階ホールの古典的な雰囲気を壊さないように配慮されている。なかなか素敵な仕上げだと思う。


ちょうど昼食時であったので、カフェに入り,ドイツ風のランチを楽しむ事にした。東京などと異なり、人で混み合う事もなく,ゆったりと窓辺の風景など楽しむことが出来る。もともと人と人の間には心地よい距離感というものがあるのだ。平日のオフィスアワーのランチタイムだけでなく、これなら休日にわざわざここを目当てに食べに来ても良い。大阪は東京に比べるとまだ一人当たりの空間がゆったりしているのだ。ウエートレスに聞くと、このビルは昨年の7月に完成し、カフェも同時にオープンしたのだとか。私が大阪を離れた時だ。

 そう言えば朝日新聞大阪本社ビルも新館は建て替えが完成して、あのフェスティバルホールもリニューアルオープン。名近代建築、旧館も,取り壊されて建替え工事中だ。堂島・中之島の景観も大きく変わって行く。たった一年で今浦島太郎になってしまった。しかし、大阪もだんだんオシャレな街に変わってゆく。阿倍野ハルカスや大阪ステーションシティーの喧噪を離れて、こんなところに寛ぎの空間が出来ているのにうれしくなった。

 このコージーなカフェの席に座っているとリバーサイドウオークを散策する人が見える。大阪は梅雨の晴れ間の蒸し暑い一日だった。食後のコーヒーが運ばれてくるのを待ちながら心地よい空間に身を置いて窓辺を見る。まさに一幅の絵のようであった。



コーヒーを待つ間,窓辺に一幅の画を楽しむ