2015年2月2日月曜日

今、5年前の「初夢」を思い起こしてみる。 〜文明の盛衰と世界観の変遷〜

 5年前のあの時、夢想した世界史の大きな潮流の転換点を、今日この時にこそ思い起こしてみる。21世紀の中国、インドの台頭を。そしていまだ混乱のなかにあるイスラム諸国の胎動を。残虐で理不尽なテロリズムに動揺し、目を曇らせてはならない。「絶対に許せない」と誰もが言う。全くその通りだ。が、そこで立ち止まったらテロリストの挑発に反応しているだけだ。そこから先の思考が止まってしまう。

 ここでちょっと目線を上げて「文明の盛衰」という数百年周期の波動を見据えてみよう。それはマクロ的に歴史を振り返り、未来を展望するということである。そこから得られる世界観は、誰かにとっての「悪夢の終わりで薔薇色の夢の始まり」が、別の誰かにとっての「薔薇色の夢の終わりで悪夢の始まり」である、といった単純な「正義の変遷」でかたずけられるようなものではないことがわかる。「文明の盛衰」とはそんな誰かの正義と誰かの悪の二元論で説明できないことがわかる。いまだに多くの人間が誰かの正義の名の下に殺されている。こうして連鎖的にただ憎しみが憎しみを生み出しているだけだ。正義や悪は後から説明される。「文明の盛衰」があっても人間は何も変わっていない。

 しかし、一方で古代人や中世人にとっての地球/世界と違って、近代人の地球/世界は、はるかに小さくて脆弱な「村(Global Village)」になってしまった。我々はこの星が宇宙に青く輝く小さな星であることを知ってしまったのだ。しかも生命が存在する星は、この宇宙にそんなに多くはなさそうだ、と。「おーい!誰かいるか?」と宇宙に向かって叫んでも、なんの返事も帰ってこない。地球は孤独な生命の星だと。問題は、その狭い地球「村」の中の「文明の対立」が引き起こす戦争、テロ、貧困、飢餓、そして環境破壊が、「文明の崩壊」さらには地球上の種の大量絶滅につながらない知恵を出し合うことが出来るかだ。さもなければ、後世、この21世紀の地層が、白亜紀とそれにつづく古第三紀恐竜を絶滅させたという小惑星の衝突などの偶発的な自然現象ではなく、人間という種が引き起こした大量絶滅のK−T境界となってしまうかもしれない。

 問題を地球全体にすり替えて、地域の現状から目をそらせるな。これでは今の問題を解決できない。誇大妄想で、荒唐無稽な悪夢である、と言われるかもしれない。しかし、少し頭を冷やして目線を変えてみたい。問題のありかを長い歴史の全体を俯瞰するところから始めてみたい。魔法の薬のような即効的な答えや明確な処方箋はそこにないかもしれないが、何か考える視点を提示してくれるかもしれない。歴史を知るということはそういうことなのだ。どうせカッカして「木を見て森を見ず」じゃいい考えなんか浮かばない。「誇大妄想」「荒唐無稽な悪夢」。まさにそうであることを祈るばかりだ。

以前モノしたブログ:

「時空トラベラー」 : 2010年正月 初夢を見た: 15世紀の大航海時代が始まる前のヨーロッパはユーラシア大陸の西端に圧迫された後進地域であった。森の中で獣を追っかけて西へ東へ移動していた狩猟民族の世界だった。ローマ帝国から広がったキリスト教はまだ世界宗教ではなく、東方の圧倒的なイスラム教世界に包囲された地方宗教に過ぎなかった。


追記:

 16世紀、ヨーロッパのキリスト教徒が、広大なユーラシア大陸の西端のヨーロッパを出て、上述のような理由で東アジアへの東航路、西航路を切り開いた。、バスコダ・ガマはインド航路、さらにはマラッカ、中国への路を開いた。コロンブスは東ルートでインド/ジパングへ行こうとして偶然「新大陸」を「発見」した。マゼランは世界一周航海を達成し世界が丸い球体であることを証明した。これが「大航海時代」と後世呼ばれ、ヨーロッパ人/キリスト教徒中心の世界地図が流布し、そういった世界観が形成された。西洋文明全盛の時代がこうして到来した。

 しかし、こうしたヨーロッパ人の世界観が形成される以前、14世紀、イスラム教徒である大旅行家イブン・バトゥータは3大陸を周遊する大旅行を敢行した。また同じ頃、中国では明朝の宦官鄭和が皇帝の命を受け、大船団を率いてやはり東南アジア、インド、アラビアからアフリカまで遠征している。13世紀のベネチアの商人マルコ・ポーロは元朝の首都大都まで旅して「東方見聞録」を著した。あの「黄金の国ジパング」を紹介した本だ。しかし、彼の旅はアラビアの商人やスルタンの知識と保護/導きによるものであるとされている。中世のヨーロッパは偉大なイスラム文明から見ると文化果つる大陸西の果ての辺境地域でしかなかった。東へ行こうとすると巨大なイスラム世界(異教徒の世界)が立ちはだかり、海を渡ろうとすると巨大なアフリカ大陸がアジアへの道に立ちはだかる。世界の文明はイスラム世界、インド世界、中華世界が中心であった。しかし、大航海時代の幕開けとともに、こうした文明は、西洋文明に対比される旧世界の遅れた文明として片付けられてしまう。

イブン・バトウータ
イブン・バトゥータの三大陸周遊
14世紀中4次に渡り行われた。


鄭和
鄭和の遠征
14〜15世紀初頭にかけて7次に渡って行われた



マルコ・ポーロ
13世紀マルコ・ポーロの「東方見聞録」の旅


バスコ・ダ・ガマ
1497〜1499年バスコ・ダ.ガマのインドへの航海


クリストファー・コロンブス
1492年コロンブスのアメリカ大陸「発見」
以降4度にわたる航海

フェルディナンド・マゼラン
1519〜1522年マゼラン艦隊の世界一周航海