2022年2月22日火曜日

Nikon Z9試し撮り 〜Made in Thailandのモンスターマシーン!〜



ペンタ部が少し大人になった



フラッグシップ機の証、丸型アイピース復活
メニュー表示はZ7IIとほぼ同じ


軍艦部はそっけない

これはメカシャッターではない。センサー保護用の鎧戸だ

液晶表示
再生ボタンが右下に移動

フラッグシップの証 丸いビューファインダー


液晶画面は4方向チルト

ブラックアウトフリーの電子ファインダーは気持ち良い


遅まきながらニコンZ9が回ってきた。去年の発表以来、人気沸騰で予約が殺到。供給が間に合わず、12月24日の発売日当日に入手できた人はごくわずかという有様だったようだ。しかも世界的な半導体不足がボトルネックとなり生産が滞っているとのことで、次の供給時期は10月と言われていた。期待が大きかっただけに多くの人がガッカリするやら、そんな先ならと半ば断念するやら。ところが突然、2月15日になって世界中でZ9が供給され始めた。もっとも数が限られているようだ。諦めていたところにいきなり「補欠合格通知」。「入学金」をすぐ納めろ!と来た。資金調達が間に合わない。下取りの時間はないので後から機材の売却でキャッシュアウトを補填することにする。取り置き期間が過ぎると次へ回す、と言われるとつい慌てて無理繰り算段するすることになる。バブル期のマンション抽選、購入のドタバタを彷彿とさせる。それにしてもニコンはハイエンド機までとうとうMade in Thailandになってしまった。ライカがMade in PortugalやMade in Canadaをやめて、また内部がMade in Japanであることをひた隠しにしてまで「Made in Germany」に固執しているのに対し、ニコンはあっけらかんとMade in Japanを放棄してしまった。なんともおおらかなことだ。経済合理性優先のコモディティー商材ならいざ知らず、ハイエンドの高品質商材のブランドバリューとは如何なるものか。

それはともかく、このZ9はすごいモンスターマシーンだ。ニコンの渾身の「お道具」登場だ。しかも、これでこの価格は確かにバーゲンプライスだ。スペックや機能、操作性のことはいろいろなレポーターや事情通が既にSNSやYouTubeで語っているし、今更、素人が知ったかぶりを披露するのもなんなのでそちらを読んでほしい。ただやはり、4571万画素という高画素機なのに高速連写、高感度ノイズ低減。ブラックアウトフリーな電子ファインダー、メカニカルシャッターを廃した電子シャッター、被写体に応じたAFの食いつきの良さ、等々。文句の言いようがない。全部ありのモンスターだ。ニコン伝統の縦位置グリップ付きのミラーレスのフラッグシップ機を出してきたということだ。4K、8Kの動画機能までしっかり装備。もっとも私はこれで動画は撮らないが。しかし...

正直言って第一印象は、私のようなアマチュアブラパチ写真家にはハイエンドすぎてオーバースペックだということ。それにミラーレスにしては大きくて重すぎる。ライカSL2が重いなどと言ってる「年寄り」にはムリだ。多分これに大三元レンズつけてご近所散歩なんて、まるでベンツSクラス運転してコンビニに買い物に行くような所業だ。「わきまえよ」と言われそうだ。報道やスポーツ写真や、動物写真や野鳥観察、自動車、鉄道、飛行機などの動きものには最高のマシーンだが、私のジャンルである風景写真にはどうか?高速連写性能やインテリAFが役立つ場面はあるか。いや、まあ風景は高解像な描写性能が大いに役立ちそうで良いだろうが、日常のブラパチには... 人物写真にはどうだろう。もちろんこれ一台でなんでもいけるオールラウンダーには違いないし、なんと言っても所有欲を満たす「お道具」に仕上がっていることは間違いない。ただアマチュアには縦位置グリップのない「Z8」のような機種が出て来ればありがたい。それを待つべきだったか(ちょっと後悔...)。ちょうどD5、D6じゃなくてD850のようなカメラがいいのになあ。それとZシリーズ全体のデザインと風貌は、D6やD850のような成熟した大人のそれではなく、Z7IIに感じたまだ成長過程の青二才ぶりがZ9にも感じられる。Z7IIが18歳とすればZ9はようやく25歳くらいに成長したか。かつてのF3やF5、さらにはDfのような風格と貫禄を身に付けるのはまだまだ先のことなのだろう。

また、いつものことであるが、機能メニューが多すぎる。使い方がわからない機能まで、実に多様なメニューがてんこ盛り。必要な設定を探し出すのに検索エンジンを搭載してくれと言いたいほどだ。選択肢が多いのは良いこと...なのか?設定に手間取るのはどうなのか。マニュアル読まなきゃわからないのは困るが、こんなてんこ盛りなのに最近の流行りでマニュアルが端折られているのはもっと困る。シンプルこそキモだ。結局、道具は使い手が使いこなすもので、道具に使われるものではない。これはライカSLの時にも述べた感想だ。いや、やはりプロ用機材を素人が手にすることが間違いなのだろうと反省する。しかし、Z9を手にしてみるとライカSL2はなんとシンプルで使いやすいカメラであることか!またレンガブロックのような重さもZ9に比べると可愛いものだ。モンスターはオーバースペックになりがちだが、シンプルなモンスターがあることを気付かされた。かつて使い手に阿(おもね)ない「プロダクトアウト型」のチャンピオン、ライカも、ユーザーフレンドリーに成長したものだ。皮肉なものだ。

ニコンの渾身のZ9だが、これがニコンの救世主になるのか?半導体の調達がうまくゆかないという点でもなかなか厳しいものがありそうだ。グローバルなサプライチェーンが混乱するこのご時世にフラッグシップ機の生産を全面的にタイに移してしまう決断も大胆だ。こんな状況で大丈夫なのか。どんなに優れた製品開発しようともキャッシュフローが滞ると経営に影響が出る。資金的に耐えられるのか?人気爆発のZ9が、市場に到達するまでニコンは持ち堪えることができるのか?さらにミラーレスユーザーの裾野を広げるであろう「Z8」の開発に辿り着けるのか?ニコンファンはつい余計な心配をしてしまう。創業の地大井への本社移転(Nikon Park, Oi?)を心待ちにしているのだから頑張って欲しい。事業の持続可能性、ブランド戦略も大事にして欲しい。日本の、いや世界のチャンピオンカメラ、ニコンよ永遠なれ!


取り敢えずの試し撮り:


高画素機なのに高感度ノイズが低く抑えられている
ISO20000で撮影

逆光ではフレアーがよく抑えられている
Zレンズのコーティングが貢献している

順光
高解像で階調が豊か

動体補足能力を存分に発揮する高速連写とトラッキング
ブラックアウトフリー電子ファインダーは素晴らしい!


輝度差が大きくても明部も暗部も階調が潰れない

クロップにも十分対応できる余裕の画素数

ローリングシャッター現象は見られない