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Leica Q3 43(Map Camera) |
今年の9月に新製品Leica Q3 43が発売になった。,今日、予約していたものがようやく入ってきた。人気のライカだが今回は予約から1ヶ月待ちでゲットなのでまあまあか。
先行モデルQ3(28mm Summilux付き)は2023年6月に発表されたので、およそ1年3ヶ月ぶりの派生モデル誕生だ。何が違うのか?要するに、これまでのQシリーズは2015年の初代以来、レンズは28mm Summilux f1.7であったが、43mm Apo Summicron f.2という新しい画角のアポを冠する高性能レンズが登場した。すなわちQ3に28mmか43mmかの選択肢が出来たというわけだ。どちらが良いか?どちらのレンズを評価するかだが、「それはあなた次第:It`s up to you.」ということだろう。ライカ社が新設計したという43mmという変わった画角のレンズが搭載されているのだが(往年のライツミノルタの45mmを思いだす)、どうやらパナソニックが開発、製造したようだ。28mmから43mmになったので、Q3につきもののデジタルズームなるクロップの画角は60mm(3000万画素), 75mm(2000万画素), 90mm(1370万画素), 120mm(770万画素), 150mm(500万画素)と望遠寄りに設定されている。センサーサイズが6000万画素もあるのだから90mmくらいまでは十分な画質。最短撮影距離は60cm(Q3は30cm)であまり感動的ではない。最新のMズミルクス50mmでは最短は45cmだ。マクロ切り替えで27cm(Q3は17cm)まで寄れるが、思ったより老眼だ。一応テーブルフォトや花の撮影にも使えるが、28mmの近接撮影感覚に慣れた目にはちょっとガッカリ。外観はボディーの張革がグレーになった。オシャレというのもあるがQ3(ブラック)と区別しやすくしたのだろう。重さは51g増加(794g)。これはレンズの重さであろう。それ以外は画像エンジン、画像センサーなどの中身、外観ともにほぼQ3と同じ。価格は10万円ほど高くなった。ただ、問題が一つ。Q3で使えたフィルター(口径49ミリ)が使えない。付属のレンズフードにフレアーカッターが装着されたため、フィルター枠が干渉して装着できないのだ。薄型フィルターなら良いのか?それでもマクロモードに設定するとやはり干渉する。なぜフードをもっと深くしないのか?レンズ鏡胴が長くなった分をサイズをQ3と同じにするためにフードの深さを浅くした。そのためフレアーカッターを内蔵したことでフィルターが装着できなくなった。デザイン優先の設計。Does this make sense? この設計思想に合理性はあるのだろうか?ちょっと残念だ。
新設計レンズ、アポ・ズミクロン 43mmは、最高の高光性能を誇るだけあって試写してみるとなるほど解像度、ダイナミックレンジ、コントラスト、どれをとっても素晴らしく、アポクロマート補正により周辺部の色収差がよく抑えられている。絞り開放から安定した画像が得られるので、被写界深度以外で、画質向上のために絞り込む必要はない。パナソニック製なのかもしれないがライカらしいテイストのレンズ。4枚の非球面レンズを採用した豪勢なレンズで、かつ、その一部のレンズを前後に動かすインナーフォーカス方式をとっている。それでいてコンパクトな鏡胴に収まっている。このガラスの塊のせいで重量51g増、レンズ長5mm増になったと考えると納得できる。高画素機には高解像レンズが必須だし、DNGで撮って、ポスプロで画作りする人間にとって、弄っても画質が劣化しない高解像度で収差や破綻のないレンズは重要なインフラだ。それにボケ味も重要な要素だ。作例のようにマクロでもクロップしても画質が大きく劣化しないし、フォーカス部のピントとアウトフォーカス部のボケのコントラストも良好。高画素機+高解像レンズではもうクロップは禁じ手ではない。もちろん120mm,150mmにクロップしても、元が43mmなので望遠レンズの圧縮効果は得られない。そういう性質を理解して使うべきだろう。確かにこのレンズはゴージャスだ!あとはいつもの悩み、価格だ。M用のアポ・ズミクロン50mm、35mmがいずれもレンズだけで100万円を軽く超える価格なので、それに比べるとQ3 43は安い!?と、相変わらずライカ中毒患者にしか通じないコスパ感覚が心の中に湧き起こってくる。やはり病気だ。免疫力をつけるためには買い続けるしかない恐ろしい病気だ。それに金銭感覚麻痺という副作用がついて回る。ライカ中毒から抜け出して「社会復帰」する道は険しい。
ライカ社はフラッグシップ機であるLeica Mが今でも売り上げのメインであるが、Qの売れ行き好調のようだ。伝統的なMの使い手、保守的なライカユーザー層だけにこだわっていては商売に広がりが出てこない。これまでXシリーズやCLなどでデジカメの試行錯誤を重ねてきた技術と経験知をQに収斂させてきた。今後ますますQシリーズを強化するのだろう。その技術、経験知がやがてはMにフィードバックされるのだろう。SLの方はパナソニックとの技術協力、Lマウントアライアンスでシグマやパナソニックの優秀なレンズ群、特にズームレンズをラインアップに加え、実用性も拡大している。かといってMシリーズを止めたり、光学レンジファインダーを取り除いたりすることもしないのだろう。これからはM、Q、SLシリーズと3本建でひたすら高級ブランドカメラ路線を突っ走るのだろう。カメラ市場は安くて高性能な「コスパ優先」じゃあ儲からない市場になってきたのだろう。
Leica Q3登場時のブログは、こちらで→ 2023年9月8日「Leica Q3登場」
Q3とQ3 43とを使い比べての感想(11月12日追記)
やはり個人的にはQ3の28mmの方が使いやすい。日常のストリートスナップやブラパチ風景撮影において広角な方がより寄れるし、狭い場所でも窮屈さがなく使い勝手が良い。構図調整でも特に6000万画素センサーからクロップを多用する場合はなおさらだ。また近接撮影がマクロで17cmまで寄れるのも威力だ。これに慣れると27cmは引き気味になってしまう。要するに画質の問題というよりは画角の問題だ。カバレッジの広さが気に入っている。もちろん個人的な撮影スタイル、好みによるので、まさにIt`s up to youであるが。
Leica Q3 43外観(ライカ社HPより)
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正面 張革がグレーに |
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背面は全く同じ |
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チルトスクリーンも同じ |
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Q3(28mmレンズ)の鏡胴 |
| Q3 43(43mmレンズ) 鏡胴がQ3より5mmほど長くなった |
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鏡胴が長くなった分フードを短くして全体をQ3と同サイズとした |
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Apo Summicron 43/2レンズ構成図(Leica Rumoreより) 4枚の非球面レンズというゴージャスな仕様! |
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左がQ3 43、,右がQ3 Q3 43はフード内側にフレアーカッターが設けられたため、フィルターが装着できない。 |
(オプションのブラス(真鍮)製のフードとサムレストを装着してみた)
ブラス(真鍮)無垢のフードとサムレストなので、ずっしりとした質量を感じる。これでレンズにようやく49mmの保護フィルターを装着できるようになる。フードの重みでカメラがお辞儀する。剛性感、ホールド感は十分。しかし黒地にグレーの張革、金色のフード、サムレストという派手な出立ちのカメラに変身となるので見せびらかしには良いがステルス性は失われる。
(作例)
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通常撮影(最短撮影60cm) |
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通常撮影(周辺光量落ちもない) |