太宰府。訪問の前の週は39℃を記録し、日本一暑い街となった。今週も猛暑かと警戒したが、幸いにも多少気温が和らいでくれた。それでも暑い。インバウンドでごった返す表参道。「お餅焼けとりますよ、休んで行かっしゃれんね〜」の梅ヶ枝餅の店。そんな昔ながらの店がだんだん姿を消して、今時のファーストフード、ソフォトクリームやクレープの店など、立ち食い店が増えた。路上にゴミが散乱する。老舗の骨董民芸品を扱う店がなくなっているのにも驚いた。なんだか原宿表参道、いや竹下通りの太宰府版、と言う風情でうんざりしてしまう。そういえば古民家建築の商家もいくつかが取り壊されて建て替えられている。太宰府はオーバーツーリズム問題を抱える代表的観光地の一つになってしまった。
光明禅寺の路地
しかし一歩路地を入るとそこにはかつての静かな太宰府の佇まいが残されている。光明禅寺前の小径は静謐でいつも落ち着く。その門前に一軒の昔ながらの茶店。老夫婦が梅ヶ枝餅とかき氷を出してくれる。暑い時に静かな小径でかき氷という至福。嬉しい。「お餅も焼けてますよ」と。もちろんいただく。熱いお茶とかき氷と梅ヶ枝餅。穏やかなお店のご主人と女将さん。「私らは表参道のような賑やかな場所では店やりきらんですもんね」。「ここがよか。昭和な店でっしょ(笑)」と。このタイムカプセルのようなお店を残してくれて感謝です。ちなみに光明禅寺は石庭「一滴海の庭」で名高い禅宗の古刹である。残念なことに茶店のご主人の話だと、最近住職の体調不良で、公開を控えているとのこと。早く回復されることを祈る。
「古香庵」
天満宮の余香殿向かいに「古香庵」という懐石料理店があった。昔はとある著名な書道家の別邸だったところだ。数寄屋作りの邸宅と庭園がコンパクトにまとまった風情ある店であった。それが今回行ってみると「古民家ホテル」に変わっていた。少し離れた連歌屋通りの別の料亭と商家だったところもリノベした宿泊施設に。一棟貸しの古民家滞在型のホテルだ。。そこに泊まった。伝統的な建築と庭園に大きな改造を加えることなく、室内に檜風呂や快適なベッドルームを違和感なく取り入れている。なかなか趣があって良かった。太宰府にこのような古民家資源があったのだと再発見した。それをうまく活かした宿泊施設。何よりも取り壊されなくてよかった。そういえば太宰府には宿泊施設がなかった。参拝客や観光客は西鉄電車でやってきて、天満宮に参拝すると、参道で梅ヶ枝餅食べたりお土産買ったりして、また電車で帰ってゆく。地元に落ちるお金はそんなものだった。古都太宰府を楽しむ。太宰府政庁跡、観世音寺、戒壇院。水城へも足を伸ばし歴史を偲ぶ。そんな余裕が生まれる。少し事情が変わってきたようだ。悪くない。
再建なった御本殿
天満宮の御本殿は長く修復工事のため見ることができなかった。代わりに極めて斬新な仮殿が設けられていたが、今回はそれが撤去され、いよいよ修復なった本殿が姿を現した。美しい朱塗りの建物が見事に復元された。あの屋根が森になっていた仮殿も良かったので、それがどうなったのか気になる。壊したのか?勿体無い... 道真公の直系の子孫、西高辻家は代々、伝統と革新を旨とする家系だ。幕末に京都から亡命してきた「七卿落ち」をかくまい、薩摩、長州、土佐、筑前の勤王の志士を庇護した。現代の当主は革新的な芸術表現を仮殿に大胆に取り入れた。大阪万博の円形回廊を設計した事務所の作品だという。また折々に境内を舞台に芸術祭を開催している。そんな中、伝統的な建築様式の御本殿が再び!
朝拝
その御本殿で、朝8時半。天満宮の「朝拝」に参列した。観光客で混み合うことはなく参拝者は地元の人が多い。これを日課にしているのであろう。神官さんにお祓いをしてもらう。心が洗われる。煩悩が振り払われ悟りに至る気分。神社で「悟り」?、いやおかしくないのだ。もともとここは道真公を埋葬し、その菩提を弔うために建立された安楽寺である。それがのちに安楽寺天満宮、太宰府天満宮となった。今も御本殿の某所にご遺骸が安置されている。神仏習合は日本の文化。そういえば天満宮境内に創建された禅寺「光明禅寺」も横岳の禅寺「崇福寺」(のちに博多に移され筑前国主黒田氏の菩提寺となる)も天満宮の神護寺なのだ。鎌倉時代、博多とともに太宰府は禅宗が盛んであった。
早朝の天満宮境内は静謐で清々しい。樹齢1500年の楠の古木が日差しを覆ってくれている。もともと天満宮は楠の原始林に創建された。境内を神官、巫女さんが綺麗に掃き清める、御本殿、拝殿、回廊の朝の掃除。その後に「朝拝」。かつて太宰府に住んでいたこともあるのに、雪降り積もる余香殿で成人式をやってもらったのに。この歳になって初めて朝拝のお祓いを受けた。久しぶりの里帰りで太宰府の聖地としての尊さに改めて気付かされた。観光客でごった返す太宰府も一つの姿だが、この聖域の神々しさこそ太宰府なのだ。故郷はありがたい。
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| 修復なった御本殿 |
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| 朝拝 |
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| 参拝者へのお祓い |
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| 朝の清掃と準備に余念がない巫女さんたち |
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| 神官さんも御出仕 |
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| 整いました |
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| 3年前に本殿修復工事が始まり「仮殿」が設けられた(2023年10月の写真) |

(撮影機材:Leica SL3 + SIGMA 20-200/3.5-6.3 DG)



























































