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2026年2月20日金曜日

古書を巡る旅(76)ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)著作関連「蔵書目録」





これまでにロンドン、ニューヨーク、東京で収集したLafcadio Hearn(小泉八雲)の著作、および講義録、評論集、書簡集は下記の通り。

収集過程でのいくつかの「気付き」を記しておきたい。

* ハーンは日本だけでなく、むしろロンドン、ニューヨークの古書店でも人気の作家で、古書店店主によれば入荷するとすぐに売れてゆくという。
* 初版はボストン・ニューヨーク(アメリカ版)と同時にロンドン(イギリス版)がある。出版社はアメリカがHoughton Mifflin、The Macmillan、Little Brown。ロンドンはKegan Paul, Trench,Truebner, Osgood McIvaine 。
* 古書市場には比較的出回っているので入手は困難ではないが、初版本がなかなか手に入らない。店頭にあるのは重版、再版、リプリントが多い。それでも売れてゆく。購入者は初版本狙いの古書コレクターというより、読書家が多いのだろう。
* 旧所有者の蔵書票、サイン、書き込み、日付が残っていて、ハーンの著作にまつわる所有者の「物語」が潜んでいる。著作への愛着、ハーンの心に共感する読者の存在を感じる。
* また、書籍の装丁、デザインにハーン自身がこだわり、漢字のタイトルや日本の伝統的な家紋を好んで取り入れていること。彼自身の手になる挿画も人気で、「ジャケ買い」という言葉があるが、装丁を目当てに探すコレクターも多いようだ。わざわざ購入後に革装のスリップケースを特注する蔵書家がいるのにも驚かされる。


ハーンの作品に通底するモチーフは、日本が西欧流の近代化に脇目もふらず邁進する中で、 日本人は大事なものを忘れてはいないか、生来持っている美徳や価値観が失われていないか、それは日本人だけでなく、翻ってヨーロッパ人にとっても失ってはならないものなのではないのか。そういう危惧と警鐘である。ハーンは単なる日本へのロマンチックな憧憬や心情への共感、古いものへのノスタルジア、懐古趣味で言っているのではない。「知識(才)(Interigence)は新しく変わっていっても、生来の感情(魂)(Emotion)はそんなにすぐには変わらない」と言っている。「日本人は日本人のままでいる」とも。ヨーロッパ人がかつて教会ではなく森に精霊を感じたように、ヨーロッパ人も生来のヨーロッパ人のままでいてほしい。いわば「和魂漢才」いや「和魂洋才」のススメなのだ。
極東の片隅で長い微睡の中にいた日本はアメリカによって目覚めさせられた。開国し、西欧文明を受け入れ近代化し、富国強兵で欧米列強に追いつけ追い越せで、戦争し日清・日露戦役で勝ち、ようやく「一等国」になった。そして気がつくと欧米列強帝国主義ロジックに自ら絡み取られて、東洋の日本という自我(和魂)を忘れ、太平洋であのアメリカと戦争し負けた。軍事でダメなら、経済で「ジャパン・アズ・ナンバーワン!」。しかしそうした西欧流合理主義の近代化競争、グローバリズムは、気がつくとそれをリードしたイギリスは20世紀で退場し、アメリカさえも21世紀の今や退場し始めている。気がつくと日本は(保護者を失い)アジアに取り残されて孤立している。人口も減りゆく今こそ、あの鎖国の時代に戻ろう。軍備も産業も店じまいして江戸時代に戻ろう。八百万の神々が一木一草に宿る「葦原中国」「豊葦原瑞穂の国」。貧乏でも平和で楽しくのんびり生きれる社会に戻ろう。そううまくゆくのかどうか...

ハーンの一連の著作の中から滲み出てくるのは、古今東西変わらない人間の感情、詩情である。ハーンは激変する明治日本を見つめて、失われてゆくものに気づいた。それこそ失ってはいけないものであったのではないか。それは人間が文明と遭遇するたびに捨ててきたのだが、その「受容」と「変容」の果てに残すべき普遍的な価値がそこにはあるのではないのか。彼は、彼の著作を読む我々に、19世紀に出会ったアメリカとの離別。21世紀の「親米」から「離米」に向かう日本の、これから歩むべき道を指し示している。「明治維新」を総括すると、それは「富国強兵」でも「殖産興業」でもないと。その果てにあるものがある。それに今気づいた。


Glimpses of Unfamiliar Japan:『知られぬ日本の面影』 

1894年アメリカ初版全2巻

Boston and New York, Houghton and Mifflin and Company

熊本時代の著作 初めての日本の印象、松江、杵築大社の思い出 ハーンの日本第一作

Mitchell McDonald, Basil Hall Chamberlainへの献辞

ハーンによる巻頭言

表紙デザイン「竹の本」

東京神田神保町 北澤書店





Out of The East: Reveries and Studies in New Japan:『東の国から』

1895年アメリカ版初版 

Boston and New York, Houghton and Mifflin and Company

熊本時代の著作 東京時代に出版 「夏の日の夢」「九州の学生」「博多」「柔術」など、 「神の都」松江から「軍都」熊本へ、急速に変わりゆく日本への戸惑い、惜別

西田千太郎への献辞

表紙デザイン「和綴本風」

Complete Traveller Antiquarian Bookstore, New York





KOKORO: Hints and Echoes of Japanese Inner Life:『心』

1896年アメリカ版初版 

Boston and New York, Houghton, Mifflin and Company

東京転居、日本に帰化直後の出版 日清戦争勝利ののち日本人の内面について分析。 欧化しても心は簡単には変わらない

雨森信成への献辞

革装スリップケース付き(New York) 表紙デザイン「和綴本風」

東京神田神保町 一誠堂






KOKORO: Hints and Echoes of Japanese Inner Life:『心』

1896年ロンドン版初版 First edition- the London issue of the American sheets

London Osgood, McIvaine & Co.

東京転居 日本に帰化直後の出版

雨森信成への献辞

表紙デザイン「心」

Ash Rare Books, London





A Japanese Miscellany:『日本雑記』

1901年アメリカ版初版

Boston, Little Brown, and Company

東京転居 日本に帰化直後の著作  日本雑記集 焼津「乙吉ダルマ」収蔵

Elizabeth Bisland Wetmoreへの献辞

表紙デザイン「桜の本」

東京神田神保町 北澤書店





KOTTO: Being Japanese Curios with Sundry Cobwebs :『骨董』

1927年3月アメリカ再版(初版は1902年10月)

New York, The Macmillan Company

東京時代の著作 民間伝承、奇事、珍談、諸々の古い話

Sir Edwin Arnoldへの献辞

表紙デザイン「蜘蛛」「蜘蛛の巣」河合現雪画

東京神田神保町 北澤書店





KWAIDAN: Stories and Studies of Strange Things:『怪談』

1904年4月アメリカ版初版 

Boston and New York, Houghton, Mifflin and Company

東京時代の著作 逝去の5ヶ月前の出版 「耳なし芳一」などハーンの再話文学の代表作

日露戦争開戦時の巻頭言

表紙デザイン 小泉家の「長門澤瀉紋」

Ash Rare Books, London




KWAIDAN: Stories and Studies of Strange Things:『怪談』

1904年4月ロンドン版初版 

London, Kegan Paul, Trench,Trubnerand Co.,Ltd.

東京時代の著作 逝去の5ヶ月前の出版 「耳なし芳一」などハーンの再話文学の代表作

日露戦争勃発時の巻頭言

表紙デザイン「和綴本風」

東京神田神保町 北澤書店





Japan: An Attempt at Interpretation:『神國』

1904年9月アメリカ版初版

New York, The Macmillan Company

東京時代 最晩年の日本論集大成 日本人の宗教観 神道論など 日露戦争開戦時の著作

献辞なし

表紙デザイン「菊花紋」

東京神田神保町 北澤書店






Japan: An Attempt at Interpretation:『神國』

1906年2月アメリカ版第7版(初版1904年9月)

New York, Grosset & Dunlap, Copyright by The Macmillan Company

東京時代 最晩年の日本論集大成 日本人の宗教観 神道論など 日露戦争開戦時の著作

献辞なし

表紙デザイン「日本風ではない?」

Appendix: 八雲逝去後に「ハーバート・スペンサーの日本への助言」が編者によって追加

Complete Traveller Antiquarian Bookstore, New York




The Romance of The Milky Way and Other Studies & Stories:『天の河綺談』

1905年10月アメリカ版初版 

Boston and New York, Houghton and Mifflin and Company

ハーン没後、日露戦争ポーツマス講和直後の出版 彼の未定稿の原稿から天の河綺談など、民話集

F.G.によるイントロダクションとハーンへの追悼 

表紙デザイン「和綴本風」

東京神田神保町 北澤書店





Life and Letters

1922年(初版1906年)The Large-Paper Edition limited to750 copies #565

Boston and New York, Houghton Mifflin Company

Edited and introduced by Elizabeth Bisland

ハーンの生涯の友人エリザベス・ビズランド編『ラフカディオ・ハーン全集』全16巻の第13巻

ハーンの生い立ち、経歴、評伝と書簡集

東京神田神保町 北澤書店





Japanese Letters

1922年(初版1910年)The Large-Paper Edition limited to 750 copies #565

Boston and New York, Houghton Mifflin Company

Edited and introduced by Elizabeth Bisland

ハーンの生涯の友人エリザベス・ビズランド編『ラフカディオ・ハーン全集』全16巻の第16巻

主としてチェンバレン、妻セツへの書簡集

東京神田神保町 北澤書店





A History of English Literature :『小泉八雲 英文学史』

1970年改訂版(初版1922年、戦後長らく再版されなかったもの)

Tokyo, The Hokuseido Press:東京神田錦町 北星堂書店

ハーン没後に東京帝国大学での英文学講義録を教え子たちが編纂したもの

田部隆次、落合貞三郎、西崎一郎 共編

1941年3月 巻頭言

スリップケース、ダストカバー付き

東京神田神保町 北澤書店






Lafcadio Hearn in Japan with Mrs. Lafcadio Hearn's Reminiscences:『日本におけるハーン』

1910年初版

London, Elkin Mathews and Yokohama, Kelly & Walsh

by Yone Noguchi

著者による巻頭言

Mitchel McDonaldへの献辞

野口米次郎による日本でのラフカディオ・ハーン論(アメリカでのハーン批判への反論)とハーン夫人の思い出

和綴本 和紙スリップケースつき

表紙デザイン 創作家紋「下げ羽の鷺」Hearn名字の由来、Heron(鷺)に因んで松江中学美術教師 後藤金弥(魚州)に頼んでデザインしてもらった

東京神田神保町 北澤書店






Lafcadio Hearn(小泉八雲)の日本14年:

1850年ギリシャ生まれ

1890年4月4日       横浜着

同年 8月30日      島根県尋常中学・尋常師範学校に着任 

同年                        小泉せつとの出会い、結婚

1891年11月           熊本第五高等中学着任

1894年7月25日    日清戦争開戦(1895年4月17日下関条約で講和)

1894年9月29日     『Glimpses of Unfamiliar Japan』出版

同年 10月6日     神戸ジャパン・クロニクルへ転勤(1895年1月30日退社)

1895年3月9日       『Out of The East』出版

1896年2月10日    帰化手続完了(妻の懐妊を受け、小泉八雲と改名)

同年 3月14日     『KOKORO』出版

1896年9月2日     東京帝国大学着任 東京転居

1901年10月2日    『A Japanese Miscellany』出版

1902年10月22日  『KOTTO』出版

1903年3月31日  帝国大学退任(1月15日解雇通知)

1904年2月8日    日露戦争開戦    (1905年9月5日ポーツマス条約で講和)

1904年3月9日    早稲田大学講師

同年 4月2日    『KWAIDAN』出版

同年 9月         『Japan An Attempt at Interpretation』出版

1904年9月26日    逝去(54歳)雑司ヶ谷墓地

1905年10月       『The Romance of The Milky Way』出版


(小泉八雲記念館HPを参考)


2026年2月17日火曜日

池上梅園の梅が満開!紅白黄揃い踏み





今日はあいにくの曇り空で肌寒い1日であったが、池上梅園の梅が満開と聞いて、出かけることにした、幸い晴れ間も出始めて絶好の観梅散策日和となった。目の前に広がる紅白の梅のグラデュエーションが美しくて息を呑む。蝋梅の黄色がそれに加わって華やかさを増している。写真撮影にはピーカンより薄曇りの方が光が回って良い。シグマの高倍率ズームが大活躍であった。今年の梅の開花は例年より少し早いようだ。一週間前には都心でも雪が降り積もったと思えば、先週末は4月並みの暖かさ。季節の移り変わりの時期ならではの不安定な天候だ。そうした中でも梅の開花は順調に進んだようだ。去年の池上梅園散策は2月23日で。まだ満開ではなかったので今年は早いのだろう。そういえば、伊豆の河津桜も満開で見頃だそうだ。朝のお天気がイマイチだったので人出はまばら。ゆっくりと散策できた。例年長蛇の列の「甘酒」も今年はすぐにゲット。

世の中ゴタゴタと予測不能な出来事が溢れ始めている。何やら将来に対する漠然とした不安が漂うご時世だが、季節だけは移ろい、折々の花が咲き誇る。心が安らぐ。自然と共に穏やかに生きてゆきたいものだ。



池上梅園入り口
 







福寿草

一本の幹から紅梅と白梅が咲く「思いの儘」







蝋梅


座論梅








メジロのパラダイス!







本門寺塔頭の紅白梅
池上本門寺階段の河津桜も満開に




(撮影機材: Leica SL3 + Sigma 20-200/3.5-6.3 DG)