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2021年12月6日月曜日

富士山絶景 晩秋の鎌倉散策 〜古我亭、鎌倉歴史文化交流館界隈〜

 

絶景富士

義父母の墓参に合わせて、久方ぶりに鎌倉を散策。お天気もクリアーで気持ちの良い散策日和であった。今回の収穫はなによりも眺望絶佳の高台にある霊園からの秀峰富士山の立ち姿である。この時期の清澄な空気感と、弧を描く由比ヶ浜との絶妙のコラボは、まさに絵に描いたような風景だ。ここからこれほどに美しく展望できるとは今まで気がつかなかった。あまりにも典型的な風景写真、されど感動的な風景写真となった。これまで忙しくそそくさと墓前での法事を済ませて帰るばかりであったが、少し心に余裕ができて、ふと気づくとこんな絶景があったんだ、と。亡き義父母に感謝だ。

高台から下り、街を散策する。今回歩いたのは扇ガ谷界隈。あまり観光客で混み合わうことの少ない地区で、閑静な住宅街という佇まいだ。少し足を伸ばせば寿福寺がある。まず、鎌倉に現存する洋館、いわゆる「鎌倉三大洋館」の一つである古我邸を訪ねる。門から母屋までの長いスロープを歩く。今回は中には入らなかったが、建物はオリジナルの仕様をそのまま修復保存した素晴らしいものだ。19世紀アメリカのシングルスタイルと呼ばれる様式だそう。左右非対称で、装飾を廃したシンプルなデザイン。ファサード全体が板片(シングル)で覆われている。元は大正3年に建てられた三菱財閥の重役の別邸だったが、現在は高級フレンチレストランになっている。ちなみに「鎌倉三大洋館」とは、この古我邸の他、前田公爵邸(現在の鎌倉文学館)、旧華頂宮邸だそうだ。

この古我邸から少し歩くと鎌倉歴史文化交流館に至る。建物はイギリスの著名な建築家Norman Fosterの建築事務所フォスター+パートナーズの設計になるもの。2004年に竣工した美術品コレクターの個人邸宅Kamakura Houseであったものが鎌倉市に寄贈され、2017年に改装して博物館施設として開館した。全く新しい建物だがこの建築自体がアートで、これから鎌倉の21世紀建築遺産として長く愛されることになるのだろう。展示は縄文時代から中世鎌倉、そして明治期以降の文豪まで、鎌倉の歴史や文化的な遺産を概観するには良い施設だ。ちょうど来年の大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」展をやっていた。小学生と中学生の社会科見学の一行で賑わっていた。鎌倉には歴史的な史跡だけでなく、こうした文化施設が整っていて羨ましい教育環境だ。

鎌倉はこのように近現代の建築遺産にも見るべきものがあることがわかった。「鎌倉三大洋館」はいずれ制覇しよう、また文人の邸宅跡が記念館にもなっているようだ。「馬込文士村」ならぬ「鎌倉文士村」だ。いろいろ街歩きの楽しみ方がある。今日の鎌倉は平日だったので、週末の喧騒というほどの人出はなかったが、帰りに立ち寄った小町通りなどは相変わらずの混雑ぶり。修学旅行か、社会科見学か、中学生くらいの団体が溢れていた。日本はコロナ感染者数が激減し、観光客の足が戻ったのは良いが、またオミクロン株騒ぎでどうなることか。まったく心休まる時がない。

鎌倉は関東にあっては古都の趣を蓄える美しい街である。武家政権発祥の地としての性格。臨済宗、日蓮宗などの鎌倉仏教発祥の地としての性格、そして明治以降の政財界、文人墨客のお屋敷、別邸の町としての性格。どれもが、周りを山に囲まれて正面を相模湾に面した狭い土地にぎゅっと凝縮されている。攻めるに固く守りには易い要害の地ではあるが、外に向かって発展するには不向きな土地柄。これが、のちに歴史の画期となる鎌倉幕府、すなわち武家政権の発祥の地とはなったものの、その後の幕府の拠点は、京の室町、江戸とめぐり、ついに鎌倉には戻ってこなかった理由の一つであろう。そして現代においては、休日ごとに繰り返される人出と車の渋滞。観光地としての魅力に誘われて繰り出す人の群れを受け入れる地形的な受容度には限りがある。静かな古都の雰囲気を味わうにはちょっと。京都もそうだが、ここでもオーバーツーリズムがやはり問題となる。そうでなければ老後に住みたい町の第一候補になるのだが。



由比ヶ浜、稲村ヶ崎、江ノ島のタワー、奥に伊豆半島の山々


古我邸


19世紀アメリカの「シングルスタイル」建築
ファサード全体が板片(シングル)に覆われる独特のスタイル


紅葉の鎌倉歴史文化交流館
イギリスのフォスター+パートナーズ設計


光ファイバーを組み込んだ人造大理石を壁面に用い明と暗を表しているという。


文豪の鎌倉

永福寺瓦

宋銭

縄文時代遺跡出土品の数々


やや紅葉は盛りを過ぎたが

中世の谷戸が敷地内に

展望台から鎌倉市内を眺める

こちらの紅葉は見事


 界隈は閑静な住宅街

小町通りへ出て駅に向かう


(撮影機材:Nikon Z7II + Nikkor Z 24-70/2.8 + Nikkor Z 70-200/2.8)