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2010年4月20日火曜日

空のシルクロードは大混乱

 アイスランドの火山噴火の影響でヨーロッパ各国の航空当局が空港閉鎖を決めて、もうかれこれ6日。

 我が家のゲスト、娘の友達で、イタリアから来たフォトグラファーも昨日ミラノへ帰る予定が、完全にスタック。
連日、電話とウエッブサイトで運行状況を確認するも全くフライト再開の見通しは得られず。電話は全くつながらないので、成田まで出かけてカウンターに並びようやく得た回答は一番早くて30日のフライト予約なら受け付ける、と。
 まあ、10日間のエクストラホリデーだとポジティブに考えて、日本の写真撮りまくってください。
おかげでニューヨークへ明日、帰る予定だった娘も、出発延期してこの友人に付き合うことに。
困った時の助け合いは大事。友情を確認し合うことができるのも怪我の功名かもね。

 彼女もたくましい。さすがマルコポーロの子孫にして、西ローマ帝国の首都ミラノから来たイタリア人だからか、どんな辺境地域でも旅するフォトジャーナリストだからか。
 代替ルート検討のオプションが面白い。モスクワまで飛び、そこから鉄道でミラノまで帰る。いやいやウラジオストクからシベリア鉄道でモスクワまで行こう。やはりこの際、釜山か上海までフェリーで行ってそこからバスや車乗り継いで陸路ミラノまで帰る。まさにシルクロードの旅ではないか。
 ようはユーラシア大陸は地続きなのだから、という発想。私もそんなシルクロードの旅を学生時代に夢見たことはあったが...

 そんな検討している間にも時間とともにモスクワ便も満席。しかも運賃が跳ね上がっている。シベリア鉄道だと一週間かかる。結局はかかる時間と資金とを勘案して、黄金の国ジパングで30日まで待って直行便で帰る、という選択肢を「今時点では」とったようだ。考えることは型破りだが、選択は極めて合理的。ううん...

 しかし、異常事態だ。9.11テロ事件以来の大規模な空港閉鎖。ヨーロッパ域内のトラベラーは鉄道や船やバスに換えて、大混雑とはいえなんとか目的地に到達できるものの、遠くアジアやアメリカやアフリカに旅し、帰途につくヨーロッパ人、ヨーロッパに旅して帰途につくアジア人、アメリカ人は、異国の空港に取り残されてなす術もなし、の状況。いわば難民化しているわけだ。
  泊まる所もなく、カネも底を付き...何時帰れるかもわからない。こういう時一番困るのは、的確な情報を得られないこと。もっとも合理的な選択肢を検討しようにも判断の材料がない。あきらめようにもあきらめる根拠がない。見通しがつかないというのが一番フラストレーションが溜まる。

 私もアメリカ時代、航空機での移動にはいつもこの不安がつきまとっていた。今でも悪夢のように思い出されることがある。出張で行ったミネアポリスから、NYラガーディアへ戻る最終便がチェックイン後に突如キャンセルになったときが一番腹立った。

 カウンターのおねえさん(オバさん、か)たちはキャンセルになった、といって、居並ぶ客を尻目にカウンターにPosition Closedの札を無造作に置くと、どこかへいなくなってしまった。
なぜキャンセルなのか、何の説明もない。突然すべてのプロセスが止まり、情報のない世界に取り残される。

 客に丁寧なサービスなんてハナから期待してないアメリカ人の客達もさすがに、イラッとしてたが、そのうち誰もいなくなってしまった。どこへ行ったのだろう?みんなの後をついて行きたいけど、クモの子散らすようにちりじりにいなくなった。航空会社がホテルの手配してくれる気配など全くない。自力本願の世界だから。

 最終便だから、乗り換えは翌朝だ。その手続きしたくても他のカウンターは電気が消えてて誰もいない。ホテル予約しようにも、だだっ広いコンコースにいるのは掃除のおじさんと警備員だけ。quality of serviceも、CRMも、CSRも、accountabilityも、ビジネススクールで教えてもらったキーワードなどどこにもこの場には存在していない。「途方に暮れる」とはこのことだ。

 結局、別の航空会社のNJニューアーク行きの最終便が出発遅れで待機中との情報をキャッチ。このウエイティングの最後の一席をなんとか確保して乗り込んで帰った(私が乗るとドアが閉まり出発した)。捨てる神あれば拾う神あり、とはこのことだ。

 夜も白み始める未明のニューアークに降り立ち、タクシーでラガーディアまで飛ばす。だって車をラガーディアのパーキングに置いて来たんだもん。

 成田でスタックしているトラベラー達も同じ経験してるんだろうなあ。日本のサービスは少しはいいのかな?寝袋や水や、ハンバーガーを配っている所がTVニュースに流れている。「こんなうまいハンバーガー食ったことない」とフランス人ツーリストがNHKのインタビューに答える。ここではフランス人が冷笑するアメリカ食文化の象徴ハンバーガーに舌鼓をうっている。ほらみろ、世界にはボルドーやトリュフよりもうまいものがあるだろう...ってか。

 まあ、パニクってる人には、食い物、寝袋も大事だが、的確な情報を流してもらって、見通しを得ることが優先だが。空港でこれから暮らそうって訳じゃあないんだから。

 そういえば日本人女性宇宙飛行士を乗せて帰還予定のスペースシャトルも、地上の天候回復待ちで、まだ地球の軌道を周回しているとか。なかで残りの寿司でも食ってるのかな?

 いつの時代も遠方へ出かけるときは、「風待ち」はつきもの。遣唐使も長安にたどり着く前には那の津や坊津で何日も「風待ち」をした。鑑真和尚も何度も「風待ち」「漂流」したあげく日本に漂着した。オランダ船リーフデ号もロッテルダムから沿岸沿いに「風待ち」を繰り返しながら、九州大分の府内に漂着同然にたどり着いた。どんなに交通手段が高度化しても自然の力にはかなわない。それを謙虚に受け入れて、人はdisaster recovery, risk management, contingency planningに意を尽くすことだ。そういった事態に即してもじたばたしない鷹揚さを持って。




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(読売他日系各紙より)