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2014年7月27日日曜日

Leica T Black登場!そして2ヶ月経ったLeicaTの使用感。


5月27日のLeica Tのデビューから2ヶ月。噂されていたTのブラックボディーが発売になった。個人的な好みでは、シルバーボディーよりブラックの方が、ライカらしくて引き締まった感がすると思っていたので、デビューを期待感を持って待っていた。

 レンズは黒鏡胴。外付け電子ファインダー(いわゆるVisoflex)も黒。付属ストラップも黒。なのにボディーだけがシルバーというT。白黒パンダも別に悪くはないが、往年のM3はボディーがシルバーでレンズ鏡胴もシルバーだった。カメラ全体の風貌はいかにも工芸品的な精密さを持った金属の固まりで素晴らしかった。そうしたシルバーM3の定番カメライメージがあったので、シルバーボディーでデビューしたTシリーズには、往年のライカ復活との期待感があった。

 その後、M3に黒いマスキングテープを貼付けたアンリ・カルチェ・ブレッソンの影響か、特別仕様のブラックペイントのM3,M2が世に出た。この頃の塗装は質が悪くて、すぐハゲちょろげになる。しかし、そのハゲ具合が何ともいえず良い、というマニアの間で、中古ブラックが高値取引される。これを「黒皮病患者」と呼んで喜んでいた。マニアってヤツは... M4くらいから特別仕様でなく黒ボディーが製品化され、M6からブラックボディーが主流になり始めた。それに伴ってレンズ鏡胴も黒が主体となる。カメラが現場で目立ってはいけない、というフォトジャーナリストの意見が反映され、それがアマチュアにもプロ仕様という事でウケた。こうしてやがては黒ボディーがライカの定番のイメージに置き換わっていった。

 Leica Tのシルバーボディーは、素晴らしい仕上げだ。M3時代の復活か、と思われた。それだけにシルバー鏡胴のTマウントレンズ群を取り揃えれば、レガシーとモダニズムが融合して面白かったのではないかと思う。T発表会でのこの点に関する会場からの質問に対するライカ社の開発担当の反応は、「シルバー鏡胴のTレンズを出す予定は無い」とつれない。ライカノスタルジアを追求するのでなく、それから脱皮する新しいシリーズにしようという意気込みなのだと解釈することにしよう。

 ともあれ、Tのブラックが登場してきた。シルバーも良いが,今やこちらの方が正統派ライカのような気がするから面白い。マット調の仕上げは上々で、アルミ削りだしの質感を損ねていない。ずっしりとした質量、手触りも良い。さすがだ。Vario-ElmarとVisoの黒ともマッチしていて、ステルス性を取り戻した感じだ。これで目立たずTを持ち出すことが出来る(赤いライカロゴマークはもちろん目立っているが)。

 さて、Leica Tを使い始めて2ヶ月経った。その後、使ってゆくなかで気がついた点と、ファーストインプレッション(http://tatsuo-k.blogspot.jp/2014/05/leica-taudiaudi.html)とは少し違った印象も持ち始めたので、少々コメントしてみたい。

 気がついた点:

 気になっていたタッチスクリーンによる操作性は悪くない。機能の設定変更も、頻繁に使う項目は第一画面に呼び出して保存しておくことが出来るほか、階層が二段構成で浅いので使いやすい。露出補正、プログラムシフト、ISO感度設定、MFアシストなどはダイアルに割り付けておくことが出来る。目新しさを追求すると使いにくくなりがちだが、よく出来ていると思う。その他は...

1)意外にバッテリーの消耗が速いようだ。少なくともフル充電から、現場で何枚か撮り始めると、早くも電池マークの右端が欠け始める。その後は保つのだが「心理的に」充電をせかされる感じがする。VisoでGPSをオンにするとそれなりに電池を消耗するのだろう。スペアーバッテリーはマストアイテムだ。

2)WiFiは実用にならない?自宅の無線LANもiPhoneのテザリングも、なかなか波を拾ってくれない。ようやく繋がっても、レスポンスが異様に遅くて、忘れた頃にカシャリ! シャッターチャンスなんてモノではない。そしてまたすぐ接続が切れる。どうしたものか。WiFiはIEEE802.11標準規格(b/g/n対応)というが。こんなもの搭載してみました、か? まあ、あまり使わないから良いけど。

3)やはり全体にレスポンスが遅い。電源オンからの起動にも2〜3秒かかる。一番レスポンスの遅さを感じるのは、再生画像のスクロール。せっかくタッチスクリーンにしたのだからサクサク感が欲しい。

4)オートホワイトバランスで、アダプターリング+Mレンズを使用すると、Tマウントレンズで撮影した時と色味が変わる。特に室内で撮影するときにはオートではなく、蛍光灯か、白熱電球モードに設定した方が良い。

5)Visoで、MFフォーカスアシストを6倍拡大に設定すると、ピントが合わせづらい。クローズアップされたところがギザギザでピントの山が掴めない。

 まあ、ライカという大御所にとって、どれも致命的な問題ではないかもしれないが、今後のファームウエアー更新で改善されることを期待する。なにしろ、プロ用の機材ではなく、アマチュア用の機材なのだから、むしろ他社のAPS-Cミラーレス製品と比べられることになる。消費者の眼とコスパ感覚は厳しい。逆説的な言い方だが、アマチュアはプロほど寛容ではない。すぐに「買わない」という評決がでるのが怖い。

 最後に一言。「なんか普通のカメラになってしまったのかなあ」。ボディーデザインは素晴らしい。手にした質感も素晴らしい。その素敵な出で立ちから出力される写真は、ライカらしい個性が表現されているのか? レジェンドとなった伝統の画作りは生きているのか? 下記の作例のように、素晴らしい描写力で、間違いなくキレイな写真が撮れるのだが、なんかライカを持ち出して撮る時のワクワク感、特別感が、すこしフツウになってしまった気もする。 やはりAPS-Cサイズで暗いズームレンズの組み合わせだとこうなるのか。せめてLeica X Varioの70mm望遠マクロ(近接撮影距離30cm)が欲しい。Tの85mm近接撮影距離45cmだとボケがきれいに出ない。全体的に、木村伊兵衛のいうライカ独特の味である「デッコマ、ヒッコマ」が微妙に無くなった? 他ならぬライカなのだから、という期待感が大きすぎるのかもしれないな。フツウじゃ嫌だ、という...

 ユーザって、わがままで贅沢をいうものだ。そして飽きっぽい... 横目でNikon D810のデビューをにらみつつ。

建仁寺中庭

建仁寺丸窓

鴨川河畔
黒鏡胴のVario-Elmarにマッチする

当然バッテリー底板も黒

追記(2016年1月記):2015年末にTのファームウェアーがバージョンアップされた。これにより、上記の諸々の問題点が改善された。特に電源オンからの起動が速くなった。AF合焦スピードも上がった。タッチスクリーンの操作感も改善された。さらにTのシルバーボディー向けに新しいシルバー鏡胴の単焦点レンズがラインアップされた(あれだけ出す予定はない、と言い切っていたのに)。Leica SL(Tマウント採用)発売のタイミングに、これまでの評判、課題を一気に片付けた感じだ(なんで最初からやらないのか?)LeicaTの売れ行きは、売り出し時の騒ぎほどは芳しくなくて少々がっかりだったが、ユーザからの不満の声に応えて(TマウントシリーズのSLとの比較で見劣りしすぎないよう)手を入れたのだろう。もう少し発売前の市場調査、ユーザ指向把握をキチンとやってからスペックを決め、市場投入すべきだはないか。この頃のライカは矢継ぎ早に新製品を出してくる。会社が元気が出てきたことは嬉しいが、ライカファンとしては手戻りのない製品作りを目指して欲しいものだ。