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2015年12月18日金曜日

初冬の大和古寺巡礼(2)長谷寺 〜冬紅葉を巡る旅〜



 初瀬の里に長谷観音菩薩を参拝する。この身の丈10m超、一木造りの十一面観世音菩薩立像の堂々とした立ち姿と慈愛に満ちた眼差しは、やはり資本主義的合理性に疲れた心には救いである。この観音像は平安時代に二体作られ、一体はここ初瀬の長谷寺に安置された。もう一体は観音の慈愛が他の人々にも届くようにと海に流されたという。これが相模国に流れ着き、もう一つの長谷寺が造立されそこに安置された。鎌倉の長谷観音である。こういう現代的合理性では到底理解できない伝承にいたく感銘を受ける私は、かなり観音菩薩の愛に包まれているのだろうか。物事の道理とは超越的な経験や言い伝えに基づく理解であることがあるのだ。

 長谷寺は「花の御寺」と言われる美しい寺。春の桜、五月の新緑と牡丹。初夏のシャクナゲ。そして秋の紅葉。冬の雪と寒牡丹。四季折々に息を呑むような大和路初瀬の里の美しい時を演出してくれる。しかし、錦秋の煌めきが終わった晩秋から初冬にかけてのこの季節、「花の御寺」は静寂の時を迎える。いつものような華やかさはないが、この時期こそ心静かに観音様に手をあわせることができる。境内に観光客の姿は途絶え、参道の名物くさもち屋も三輪にゅうめん屋も手持ち無沙汰な季節となる。長谷寺もこの時期に大舞台の修理、仁王門の修理を急いでいるのか、覆いが被せられている。拝観受付の女性は「スンマセンなあ、せっかくお出でやしたのに」と。「いやいやいいんです。こんな静かな長谷寺を求めてきたんですから」   

 長谷に来るといつも初瀬川を隔てた向かいの山頂の愛宕神社に登る。ここからは長谷寺の全景が見渡せる。この季節はこのあたりの名残の紅葉、冬紅葉が美しい。過ぎ行く紅葉の季節。落ち葉が敷き詰められ寂寞とした林の中にきらめく季節の残光を見る。今ここから展望する堂宇は、あの桜や紅葉に埋もれた長谷寺の姿ではないが、大舞台の奥で観音菩薩が衆生を救わんと光を放っているのが見えるような気がする。

 長谷寺に向かう参道を少しそれて、與喜天満宮参道の階段を登る。二の鳥居あたりから見下ろすことのできる初瀬街道も人や車で溢れる季節と違って静かである。ここはかつて伊勢詣の伊勢本街道初瀬の宿であった。観音信仰と伊勢詣。旅する平安みやこ人憧れの地、ここから展望する谷あいの街道筋は往時を忍ばせる景観をよくとどめている。遠くに旅の僧が一人、鳥見山を遠望する白く輝く街道を西に向かって歩んでいる。長谷寺参詣を終え、これから大和の霊場に向かうのだろう。長谷寺は西国三十三所観音霊場の根本霊場なのだ。



長谷寺十一面観世音菩薩立像
(長谷寺公式HPより引用)


愛宕神社参道の冬紅葉





愛宕神社参道







この左手に長谷寺を展望できる


愛宕神社からの長谷寺全景
全山桜に埋もれる季節の光景は圧巻だが



遠くに近鉄電車が伊勢に向かって爆走する




與喜天満宮参道


長谷寺参道を見渡すことができる。


初瀬街道
鳥見山を過ぎると桜井、大和国中へと続く

長谷寺登廊





本堂大舞台

(撮影機材:Leica SL+ Vario Elmarit 24-90mm f.2.8-4)


以前書いたブログ:
「初瀬のお山は花盛り」ー桜の長谷寺を行くー2012年