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2017年3月30日木曜日

ついにLeica M10が戦列に!

 
Leica M10 + Noctilux 50/1
外付けEVFを付けたM10が最もその能力を発揮するMレンズはやはりコレでしょう。
開放絞りの薄いピントもしっかり確認できる。

 今年1月28日発売開始後、すぐに予約したにも関わらず、滑り込みアウト!初期には数台しか入らず、狭き門だったようだ。どうしていつもライカはデビュー直後にこうも品薄なのだ!「焦らし」マーケティング手法もいいかげんにして欲しい。そして3月24日に、マップカメラから予約していたブラッククロームボディー入荷の連絡があった。大学受験不合格者への補欠連絡みたいな喜びだ!結局2ヶ月弱で手元に来たわけだ。前モデルのM Type240は半年待ちだったのに比べると、ライカ社が説明していた通り、これでもかなり納品が早くなった、ということなのだろう。

 前回のブログで、入手前の店頭ファーストインプレッションを書いたが、実機を入手して感じたことを書いてみたい。

1)薄さだけでなく一回りサイズダウンした感じ。実際には厚さ以外は変わっていないのだが印象的にはよりコンパクトになった感じがするのが不思議だ。手触りは、昔のM4ブラッククロームを彷彿とさせる。少しエッジが尖っている感があって手が痛い。まだ新品なので角が取れてないせいか(〜なこたない?!)

2)ブラッククロームボディー、ブラックペイントレンズとの若干質感不一致があることに気付いた。マット調で硬質な感じが良いのだが。実際ブラッククロームレンズは少ない。オールドレンズのTele-Elmarit 90/2.8くらいだ。シルバークロームレンズはあるのでシルバークロームボディーの方が良かったかな?あるいはシルバークロームレンズを装着しても様になる。やはりオールドレンズであるSummicron 35/2の八枚玉などベストマッチだ。

3)シャッター音がやや甲高くなって金属質な感じ。シャッタ機構を取り換えたとは聞いていないが。ボディーシェルや内部の基盤等の実装の影響なのか?まあ、M3のように真鍮ボディーシェルに布幕フォーカルプレーンシャターじゃないので、あの「ことり」という詫び寂びは無いのは致し方ない。

4)背面のボタンが三つになったほか、機能がシンプルになった。ビデオがないのはOKだし、撮影テンポが悪いアドバンストシャッタがなくなったのは別に困らない。しかしなぜ無くした、というのがいくつかある。その一つがLV撮影時の水平器表示。個人的には、水平器が無くなったのは不便。なぜ無くしたのか?復活してほしい。全体にメニューが簡略化され、選択肢が減りカスタマイズの余地が少なくなった。それにしてもライカ社は機種毎にまるで別の会社の製品ではないかと思うほどメニューのカテゴリー分けや、操作手順が異なっている。SLともQともType240とも異なる。もちろんTとも。機種ごとに学習が必要だ。なぜ操作性に統一感がないのだろう。他社製品の場合、機種は違っていても、基本的な視覚レイアウト・メニュー編集が統一されていて直感的に迷いなく使えるのに。

5)LV撮影での操作感が向上。M Type 240に比べサクサク行くようになった(もちろんLVオフにした方がよりサクサク感があるが)。フォーカスピーキングも大きく改善した(色の選択も可能に)。そういえばType240にもあったんだ!と言いたいほどわかりにくかった。拡大もダイアルでズームアップできるようになっただけでなく、+を十字キーで動かして拡大したいところを選べる。なんとライカがここまでやるか!ミラーレスカメラ化したM!を印象付ける。外付けEVFもT用のもの(GPS機能付き)が流用できる。ホットシューへの噛みつきもよく、Type240のように簡単にすっぽ抜けることはない。アイセンサーもキビキビ反応して快適に撮影できる。デザイン的にも良いルックスになった。ただ、LV撮影時の撮影情報表示(シャッター速度、 ISO感度、レンズ情報、露出補正などなど)が、表示するか否か、の二択になった。しかも「表示する」にすると、シャッター半押しで表示が消える。一方「表示なし」にするとシャッター半押しで表示される。どういう思想でそういう仕様になったのかよくわからない。Type240では、「表示する」を選んだ以上、シャッター半押しでもずっと表示されているのだが。この辺りが仕様に一貫性が感じられない例の一つだ。ファームウェアーで改善できるのだろうが、機種ごとにいちいちファームウェアーコーディングし直しているのだろうか。

6)バッテリーは薄くなったが、その分持ちが悪くなった。特にLVモードで撮影していると、ボディーが暖かくなって、たちまち減ってゆく。連写なんかするとてきめんだ。特に外付けEVFを装着するとGPS機能も起動し「電波を発する機器」になるので、みるみるバッテリー残量が減ってゆく。表示が100%を切ると、あとは雪崩のごとくなくなってゆく感じで不安が募る。バッテリー一個では1日の撮影はとても持たない。ここでもライカは伝統の「レンジファインダーで撮るべし」という「お作法」遵守が求められているのだろう。SONYα7シリーズもバッテリーの減り方が早い、と評判が悪い。ただSONYα7には外付けのバッテリーグリップが用意されているが、M10にそういうアクセサリーはない。予備バッテリー携行は必須。さらにバッテリーチャージャーも携行すべし。というわけで予備バッテリー需要が膨らんでいるのか、バッテリー単品購入しようとしても現時点で、品薄で入荷待状態だ。なぜこうもいつも市場投入タイミングが遅れるのか... M Type240のバッテリーは長持ちしたなあ!あれなら心配なく1日中撮影に没頭できたのに。

7)背面右上の回転ホイールが小さくなった。回しにくい。サムレストつけるとさらに回しにくくなる。機能割付も露出補正とフォーカス拡大のみ。カスタマイズできない。個人的には露出補正ができれば困ってないが、不満な人もいそうだ。

8)売り物のISO感度ダイアル。とくにコメントはない。なぜISOを独立ダイアルにしたのかよくわからない。多分、シャッターダイアル、絞りダイアル、ISOダイアルが手動で扱えるレイアウトにしたのだろう。あって役に立たないわけではないが、どうせなら露出補正の方を+ーの設定が可視化できる独立ダイアルにしてほしい。なぜかライカは頑なに露出補正操作のプライオリティーを低く位置付けているようだ。やはり光学ファインダー見ながらマニュアルでシャッター速度と絞りを設定しながら撮る、という昔ながらの撮影スタイルを前提にしているのだろう。

9)細かいことだが、背面左下のLEDの点滅が鬱陶しい。スイッチ入れても、撮影しても、再生しても、再生画面をスクロールしても、何かを読み込むごとに明滅する。暗いところでは意外なほど明るくて目障り。実はType 240でもLEDが同じように明滅するのだが気にならなかったのはなぜなのだろう。理由は簡単、LEDが右下にあるのでグリップした右手の陰になっていて見えなかっただけなのだ。左に移ったのでピカピカするのがもろに見えるようになったわけだ。撮影にとって本質的なことじゃない「重箱のスミをつつくような」話だが。

10)WiFi, GPSが使えるようになった。GPSは外付けのEVFを装着した時だけ機能する。WiFiの方は、Leica ImageShuttleをスマホにインストールしてM10と接続して使用する。QやTLやSLと同じ機能が初めてMに搭載された。さすがのMシリーズも、SNSやクラウド上のフォトアーカイビングなどのネット時代の写真表現ウィンドウを無視し得なくなった。かといって、あくまでもスマホやタブレットをプラットフォームにするので、保存できる容量が心配になる。私の場合、やはりDNGで撮ってパソコンでのポストプロダクションというプロセスも不可避なので、あまり使わないかもしれない。確かにFaceBookやInstagramへのM10からの直接アップできることに可能性を見いだせるかもしれない。

11)新しいCMOSセンサーは2400万画素のまま。より高画素を望んむユーザーもいるようだが、これで十分だろう。むしろこの画素数で高感度ノイズをうまく制御、低照度撮影時の画質を高いレベルに保持した点が評価できると思う。色味は、少し落ち着いた感じになったのかな。ひところのようなホワイトバランスオート時の「暴れ」はなくなったが、あのころのトラウマで、色味の変化をセンサーの性質と思わなくなってしまっている。先述のように高感度画質レベルは満足できる。6400くらいまでは常用だ。ノイズが出ても嫌な感じではなく、フィルム時代の高感度フィルムのそれを思い出させてくれる。何と言っても階調の豊かさ、ラチチュードは秀逸。暗部も潰れもない。デジタルカメラでは致命的な白トビ部分も情報がちゃんと残っていて、LRやPSでの後処理でかなりのところまで復元できる。この辺はすごいとしか言いようがない。JPGで撮っても満足のいく画になったが、やはりDNGで撮って後処理で自分のイメージにあった画作りを楽しむ「お作法」がライカの真骨頂だ。

 結局、今回のM10の最大の特徴は、この新しく開発されたCMOSセンサーと画像処理エンジンMaestro IIに尽きると思う。

 これまでデジタルMボディーは、必ずしもMレンズの高性能を十分にサポートしきっていないのではないかと疑問を持たれてきたが、M10で完成域に達した感がある。Maestro IIという高速画像処理エンジンと、新CMOSセンサーの高解像度、高感度特性、階調の豊かさといった大きな進歩がMレンズの性能を遺憾なく発揮できるボディーの出現を可能にしたといってもよい。「MレンズはMボディーで撮るのが一番!」ということになった。当たり前が当たり前になった凄さ。またLVの「信頼感がましたことで、高速レンズ、とくにNoctiのピント合わせが正確にできるようになった。ただ一番マッチする常用レンズはSummilux 50,35だろう。だからライカはやめられないのだ。あとは、上記に感じたいくつかの点は、取るに足らないマイナーなことに思えてしまう。

 Mは、私のような素人には「持っていること」が「嬉しい」カメラであったが、実用的には意外に出番が少なくて、ついついソニーα7シリーズを持ち出してしまう状況がつづいていた。またLeica SLはいいのだけども、あの重量にはげんなりだ。特に望遠ズームは規格外の大きさで適当な収納ケースもまだ見つからない有様。M10はとうとう、ぶら下げて見せびらかすファッションアイテムカメラから、実用機としていつも持っていたいカメラになった。出番が増えることだろう。Mに合った撮影スタイルを体感し、被写体を積極的に探しに街に繰り出したくなる。もちろん今回のM10には、ユーザからのフィードバックが幾つか反映されたとはいえ、使い手がカメラに慣れ、「お作法」に習熟しなくてはならないという、プロダクトアウト思想はまだ健在なのだ。

今年一月のブログ: Leica M10デビュー 〜ライカMはいつまでもライカMだ


Leica M10 + Summilux 50/1.4 ASPH
Leica M10 + Tri-Elmar 16-18-21ASPH

Leica M10 + Summilux 50/1.4 ASPH

Leica M10 + Summilux 50/1.4 ASPH

Leica M10 + Summilux 50/1.4 ASPH