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新設された「モース・ライブラリー」 |
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モース博士の原点 腕足類二枚貝の標本 |
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日本庭園を見渡せる |
品川歴史館は、関東大震災後に安田財閥の安田善助邸として開かれた屋敷跡。戦後は電通の吉田秀雄邸や、その後記念館を経て、昭和60年に品川区立の歴史館として開館した。その品川歴史館がこの度大幅に改修されて、4月にリニューアル・オープンとなった。今回、常設展示もリニューアルされ、これまでのモース博士の大森貝塚関連の展示や、品川宿のジオラマ展示がメインから、大森貝塚に代表される縄文時代の出土品から始まり、江戸時代の品川宿の繁栄ぶり、仏教寺院関連の文化財、明治の殖産興業の遺構など、系統的でより歴史の流れに即した時系列展示に入れ替わった。さらに特筆すべきはエドワード・モース博士を記念するライブラリー「モース・ライブラリー」が新設されたことだ。モース博士の肖像写真と業績を顕彰する資料(腕足類二枚貝標本も展示されている)の展示はもとより、博士に関する図書、大森貝塚を中心とした考古学著作、資料が保管/展示されている。ただ、以前あったモース博士の代表著作「Japan Day by Day」などの英文原著の展示が見当たらない。どこかへ仕舞われてしまったのだろうか。書架に並んでいるのは和訳されたものばかりで少々物足りない。また、膨大な日本の民俗資料(モースコレクション)を収めているマサチューセッツ州セーラムのピーボディー・エセックス・ミュージアム関連の展示もない。モースは帰国に際し、大森貝塚関連考古学資料と収集した書籍の大半を東京帝国大学に寄付し、現在は東京大学総合研究博物館所蔵、あるいは大学図書館所蔵となっている。したがって残念ながら品川歴史館に保存されているものはごく限られているのだろう。今後の収集と内容の充実を期待したい。
ここには安田善助邸時代の遺構である書院と庭園、そして茶室「松滴庵」が遺されている。今でも区民に開放されていて茶会などのコミュニティー・イベントに使われている。庭園には珍しい水琴窟もあり、その涼やかな音色を楽しむこともできる。美しい日本庭園を望む図書室で、ゆっくり書籍に親しみ、モース博士の業績に思いを馳せながら過ごす体験は至福の時間である。池上通りを鹿嶋神社の杜を左に見ながら、大森方面に少し歩くと「大森貝塚遺跡庭園」もあり、お散歩コースとしても魅力的だ。品川区民としては、近くにまた良い居場所ができたことは嬉しい。
2019年11月6日「安田善助邸、松滴庵」探訪
2021年9月5日「古書をめぐる旅(13):モース博士著「Japan Day by Day」
2023年12月30日「古書をめぐる旅(42)モース博士著「Japanese Houses and Their Surroundings」
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池上通り側の外観 |
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展示内容も一新 |
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夏休み最後の週、小学生が見学に |
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茶室「松滴庵」 |
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書院 |
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水琴窟 |