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2018年5月20日日曜日

京都八瀬の瑠璃光院探訪 〜青紅葉の大海に揺蕩う〜

 





 SNSでの「インスタ映え」人気急上昇中の京都の隠れた名所、八瀬の瑠璃光院に出かけた。出町柳から叡山電鉄で約20分の電車旅。終点の八瀬比叡山口駅で下車。昔のままのレトロ駅舎を出ると高野川に架かる橋を渡る。そこから比叡山ケーブル方面ではなく、川沿いに歩くこと2〜3分。瀟洒な門構えの屋敷が見える。郊外の別邸といった風情で、一見、寺院には見えない。辺りの静かな佇まいのなか、ここを目指して集まってくる人々が門前で写真を撮っている。さすがに知る人ぞ知る、いや人気の寺だ。週末などは混雑で入場規制すらあるそうだ。ここの書院二階から望む庭園の見事な紅葉が人気なのだ。春は青紅葉、秋は赤黄紅葉。その見事な彩りとグラデュエーションが、室内の見事に磨き上げられた座卓面や縁側の床に映る。その実景とリフレクションの一体感が不思議な世界を生み出していて素敵なのだ。この季節は青紅葉が美しい。当日は平日であったので比較的空いていた。夜はライトアップもあるそうでこちらは予約制。秋の紅葉の季節には入場4時間待ちなどということもあるという。確かに門前に入場順番待ち行列用の規制線に囲まれたスペースが用意されている。なんとまあ興醒めなことだ。密やかな隠れ家的な場所に大勢の人が押しかけるのだからしかたないのだが。ここはそもそも非公開の寺で、春と秋の二回だけ一般に特別公開される。

 秋の紅葉の季節もさぞ美しいのだろうが、この薫風薫る新緑の季節も素晴らしい。むしろ、私は人で溢れかえる秋の紅葉よりもこの季節が好きだ。桜の季節にしろ、紅葉の季節にしろ、ピークの期間が短いのと、年によってその時期が早くなったり遅くなったり、開花予想や紅葉情報に翻弄される。最盛期になってから出かけるのでは手遅れになることもあるし、人の波で何を見に来たのかわからない。なんともその季節は慌ただしく、そわそわと落ち着かない。都会人の悲しい性だ。しかし、春のこの桜狂想曲が終わると、落ち着きを取り戻し美しい若葉の季節になる。新緑の季節はゆったりとしている。観光客が短期集中してごった返すこともない。新緑の大海を揺蕩うこの自由な空気!「青紅葉」が私の中では心揺さぶるキーワードだ。

 しかし、瑠璃光院とは不思議な寺だ。京都にはこういう由緒の寺もあるのだということを知る。実はここはもとからの寺ではなかったのだ。始まりは明治/大正期の地元財界人が庵を築いたところで、その庵を三条実美が「喜鶴亭」と命名したという。その後、人手に渡り、別荘として数奇屋風書院造建築や日本庭園が造営され、隠れ家的に営まれたのだそうだ。やはりそういう佇まいである。のちには京福電鉄の所有で料亭旅館「喜鶴亭」となり、やがて料亭廃業ののちに寺院となったという変わった経歴を持つ。やはり寺院には見えないという最初の印象は間違っていなかった。2005年に岐阜の浄土宗無量寿山光明寺が購入し、現在はその子院となっているというわけだ。仏道修行の場、というより現世の極楽浄土といった風情がまた心を揺さぶる。















説明を追加
叡山電鉄の観光車両「Hiei」が入線しています。
「かおなし」です
八瀬比叡山口駅にて


(撮影機材:Leica SL + Vario Elmarit 24-90 ASPH)