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2019年12月21日土曜日

河津七滝めぐり 〜動く大地の贈り物〜

伊豆半島最大級の「大滝」


「時空トラベラー」は歴史の痕跡を辿る旅のブログである。メインテーマである日本の古代史を探訪する旅にしてもその遡る時間は、せいぜい2000年前で、中国の歴史史料や考古学的な資料が描く弥生時代の倭の成り立ち、そのある姿を辿るのが限度だ。最近は縄文時代からの変遷にも関心を持って旅を始めようと考えているが、しかし、今回は、タイムマシンを一気に2万5千年前に遡らせてみた。「日本人」の歴史を越える「日本列島」の歴史を遡る旅だ。

伊豆半島は、時を遡ること100万年前に、はるか南方の海底にあった火山がフィリピン海プレートに乗って移動し日本列島に衝突、その後60万年前に半島となったものである。その後20万年前頃には陸上で火山活動が盛んに起こり、天城山系などの現在の伊豆半島の骨格をなす地形ができた。この大型火山の活動が収束すると、今度は日本では少ない独立単性火山の活動がはじまり、伊豆東部火山群が出現した。伊豆高原などがその時にできた。今回旅した河津七滝は、その2万5千年ほど前の伊豆東部火山群の一つ「登尾南火山」から噴出した溶岩流が谷に流れ込んでできたものである。このように伊豆半島の地質は、プレート移動に伴ってできた海底火山層、その後の地上での大型火山活動でできた層、そして独立単性火山活動によってできた層、と3層構造になっている。東伊豆の海岸線に見られる柱状節理は単性火山活動に伴う溶岩流が地表や、海岸線で冷えて固まったもの。河津七滝で見られる柱状節理も、同様に単性火山の溶岩流が冷えて規則的な割れ目ができ、さらに谷筋の水流により長い時間をかけて侵食されてできたものである。伊豆半島の多様で独特の景観はこうして生まれた。面白い。伊豆半島はユネスコのジオパークプログラムに参加している。温泉も良いがこういう視点で伊豆を巡るのもまた楽しい。新しい「時空トラベラー」のスタイルとなり、驚きのストーリーを生み出してくれる。

ちなみにホモサピエンスが10万年前にアフリカを出発して、グレートジャーニーの末に、日本列島へ移動してきたのが3万年前と言われている。縄文時代が約1万年続き、徐々に大陸からの稲作農耕文明が入ってきて弥生時代へと移行していったのが2500年ほど前のこと(最近の研究で諸説あるが)。地球の歴史を考えると人類の歴史などほんの最近のことだと理解出来る。


河津七滝めぐりは、伊豆急河津駅から修善寺行きのバスで20分ほど乗り、河津七滝バス停で下車。そこをスタート地点に下の大滝から順番に散策路を登ってゆくのが通常の観光コースである。しかし、今回はバスでその上の水垂バス停までゆき、河津七滝の一番上の釜滝からスタートして、散策路を下りながら見て回るコースを取ることにした。理由は簡単。そのほうが下り道で楽だから。そして天城トンネルを抜けて下田や河津に進む天城越えルートに沿っており、「伊豆の踊子」の踊り子一行と学生が歩いた下田街道を辿るルートでもある。ちなみに、釜滝のさらに上流に猿田淵がある。ここまで行くには、釜滝とは反対方向に結構な急階段を登るので、足を伸ばさない人が多いようだ。しかし平らな岩盤を磨くように削り流れる水流は、滝とは異なる視界を感じることができ一見の価値がある。ここまで来たらついでにぜひこのスケール感を味わうべきであろう。釜滝からは晩秋の名残の紅葉も美しい片道1.5キロ程の渓谷沿の散策コースである。歩道はよく整備されていて歩くのに特別の装備をする必要もない。ただ、先日辿った旧天城トンネルまで足を伸ばす場合は、それなりの準備が必要。今回は可愛い「踊り子」に出会わなかったのが残念だった。


河津七滝は、上流から順に、

鎌滝:高さ22m、幅2m
エビ滝:高さ5m、幅3m
蛇滝:高さ3m、幅2m
初景滝:高さ10m、幅7m 川端康成の「伊豆の踊子」像があり観光客に人気のスポット
カニ滝:高さ2m、幅1m、長さ15m
出会滝:高さ2m、幅2m
大滝:高さ30m、幅7m  伊豆半島最大級の滝


エビ滝以外は厚い溶岩が凝固、収縮して出来た柱状節理が見られ、独特の景観を生み出している。石川さゆりの歌で有名な浄蓮の滝はさらに修善寺方向へ進んだところにあり、河津七滝には属していない。ちなみに、この地方では滝(タキ)を「タル」と読む。したがって河津七滝は「かわずななだる」となる。



河津七滝フォトコレクション:

杉並木の旧下田街道「踊り子歩道」
水垂バス停から渓谷へ降る階段
結構急だ
猿田淵展望デッキ

晩秋の気配が
釜滝

展望デッキに立つと水しぶきが凄い!
柱状節理の岩壁
吊り橋型の遊歩道

晩秋の趣を残す渓谷
エビ滝

エビ滝
蛇滝

蛇滝

柱状節理の岩盤を削って流れ落ちる

見事な列柱!
初景滝
「伊豆の踊子」像
初景滝前の広場にある




名残の紅葉



ここまで来れば駐車場も近い





カニ滝

カニ滝

賽の河原かと思ったらバランスロックアートだそうだ...
出合滝上流の急流
狭い岩の隙間を流れ下る


出合滝

水の青さと黒光りしたの列柱が印象的
造化の美
出合滝
出会滝はここで合流
大滝を上から見下ろす
30mの落差がある

大滝
伊豆最大級の瀑布








河津ループ橋 
(撮影機材:Leica SL2 + Vario Elmarit-SL 24-90/2.8-4, Lumix S PRO 70-200/4)