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2022年10月16日日曜日

「終わりなき変容プロセス」という都市景観 〜東京渋谷そして福岡天神・博多〜

 渋谷はいつ来ても街が変貌し続けている。いつ終わるともしれぬ工事。来るたびに街の姿が違う。資本の論理と、その合理性が問われているこの時代に、それをあざ笑うように、地上に、地下に、空中に、止めどもなく破壊と建設が繰り返される街。スクラップ・アンド・ビルド。そうして金を回さないと何かが成り立たなくなるのではないかという強迫観念にとらわれているかのように。もはやその終わりのない都市変容プロセスそのものがこの街の日常的な都市景観となり、完成に至らない途中経過であるダミーそのものがアートなのだと理解するしかない。渋谷は東急の街。この再開発も東急グループが中心になって近隣の地権者と語らって2027年目途に数々のビルの建て替えを進めている。「GREATER SHIBUYA 2.0」と言うらしい。しかしそこで終わりじゃない。次々と「勝ち馬に乗る」と言わんばかりにディベロッパーや企業が参画し、エリアを広げてまだまだ「続く:to be continued」だ。その変容プロセスの一瞬を切り取って後世に残しておくのも「時空トラベラー」の努めであろう。渋谷はもはや「谷」としての地形を視認、体感することはできない。谷あい独特の何本かの下り坂の底に形成された繁華街、という街の成り立ちを記憶することもなくなるのであろう。かつて猿楽町の住人であった頃に、桜丘の坂を下って遊びに行った馴染みの渋谷は記憶の彼方に霞んでもうない。あれから40年。「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」。

もう一つの都市変容プロセス進行中の現場がある。それが我が故郷、福岡天神の「天神ビッグバン」。こちらも破壊と建設の都市改造が進められている。福岡ではもう一つ、博多駅周辺でも大規模な都市改造計画「博多コネクテッド」が新たにスタートした。この2プロジェクトは民間ではなく行政、福岡市主導の都市改造プロジェクトだ。福岡市は国家戦略特区構想指定都市となり、福岡空港ゆえの航空法による高さ規制の緩和、ビル容積率規制緩和に基づき2025年迄に、天神地区のビル50棟を高層化する計画が急ピッチで進めている。また博多地区は2028年までに20棟のビルを高層化して回廊で繋ぐつもりだ。要するに高層ビル化計画というわけだ。確かに福岡には高層ビルが今まで一棟もなかった。都心に近くアクセスが便利な福岡空港があるためだ。いまどき貴重な都会だ。しかし、誰が福岡に高層ビルが欲しいなんて言ったのか。航空法のおかげで高さの揃った整然とした町並み、開放的な都市景観であるのが福岡だ。街中の空が広く見渡せた福岡天神、大博通りから海が見渡せた博多。そんな個性的な都市の有り様をかなぐり捨てて、東京や大阪のような高層ビルが乱立する大都会に変容させる合理性がどこにあるというのか。「福岡もコゲナ高層ビルのある大都会バイ」と自慢したいわけか。子供の頃の慣れ親しんだ風景や、ビル、商店街が次々と姿を消してゆき「知らない街」に変わってゆく。あれから50年。ここも「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」だ。

日本はなぜヨーロッパの都会のように、伝統的な建築物や歴史的な景観を生かした都市再生ができないのか。100年、いや何百年変わらぬ都市景観を維持できないのか。木造建築と石造建築の違いだ、耐震基準が変わったからだ、などともっともらしく説明している建築家がいたが、それは違う。歴史と伝統を守り使い続ける気があるかどうかの違いだ。ヨーロッパでも木造建築が歴史遺産としてだけでなく、現役の建物として使われているケースは稀ではない。一方、日本は明治以降に建てられた近代化遺産たる赤レンガ・石造建築物もどんどん壊されてなくなっているではないか。日本の耐震技術は歴史的建造物のリユースなどお手の物のはずだ。「古い」=「遅れている」。「新しい」=「進んでいる」。だから壊す。歴史を消し去ることが進化だと考え、破壊は美徳と考える価値観、思考回路がいつの間にか脳内を支配している。いつ頃からそうなったなのか。幕末の黒船、明治の文明開化の強迫観念か。近代化、合理化は箱物の作り変えだけで成し遂げられるのか。そうだとしたら明治維新は得たものも多いが、失ったものも多い。いい加減、明治維新の呪縛から脱皮してはどうなのか。いつまでも日本の大都市に成熟した文化の香りが感じられないのは如何なものか。「文化財守れる人こそ文化人」。嗚呼、昭和老人のノスタルジアと笑うなかれ。


1)東京渋谷編:「GREATER SHIBUYA  2.0」

東急など民間主導で進む都市改造計画。JR渋谷駅、東急渋谷駅、東京メトロ渋谷駅を中心に地上、地下、中空と一体再開発が進む。更にそのスクラップ・ビルドは周辺に拡大している。



渋谷という谷間に出現する高層ビル

スクランブル交差点は相変わらずのカオス

私が知っている渋谷駅とバスターミナルはどこへ?

重機がもはや都市景観の一部になった街

いつ終わるともしれぬ工事

東急東横線渋谷駅(かまぼこ駅舎)の痕跡
駅自体は地下へ

埼京線渋谷駅


タイムトンネルをワープして進むと...

スクランブルスクウェアービル屋上のスカイテラス


新宿方面展望

国立競技場

上から見下ろすと、もはや「谷間」という地形を感じる要素はまったく感じない
新装なった宮下公園
左下にスクランブル交差点

屋上ヘリポート
カオスな渋谷にこんな空に近いスペースが有ることが不思議

ソファー付き展望台は歓迎

不思議な「天孫降臨」図も拝める

SHIBUYA109と東急本店
次の再開発はここだ!

空中都市渋谷



東京スカイツリーと東京タワー

足元では終わりのない工事が続く

昭和老人が知ってる渋谷のランドマークはコレくらいになってしまった
ここも解体は時間の問題

東急本店
2023年1月31日に閉店、取り壊しが決定
東横店は既に無く、渋谷から「東急百貨店」は消える

岡本太郎は「渋谷は爆発だ!」と言っただろうか?


2)福岡天神編:「天神ビッグバン」

福岡市が主導で、天神交差点、西鉄福岡(天神)駅を中心に福岡随一の繁華街を大々的に改造する計画。国家戦略特区指定、航空法規制緩和による高さ制限、容積率拡大を起爆剤としたビル建て替えラッシュ。



西鉄グランドホテル
大名小学校を潰してリッツカールトンが建つ

見たこともないビルが出現している。私の知っている天神は消えた


昔懐かしい因幡町商店街は姿を消し、地下に移転?

天神交差点
かつてのビル街が消えてしまった
こうしてビル群が無くなってみると空が広い!

「天神ビッグバン」第一号ビル
昔ここには老舗の万年筆専門店があった

福岡ビル、天神コアビル、Vivre天神ビル、イムズビル
4棟一括建て直し


西鉄福岡(天神)駅
なんで今さらPARCOと同棲なんだ

西鉄福岡(天神)駅コンコースはビルの中に

西鉄福岡(天神)ターミナルビル
ターミナルデパートは岩田屋(地場資本)から三越(東京資本)に

左はNHK福岡放送局跡、右はNTT天神電話局跡
いまは岩田屋本店


最後まで残る昔ながらの商店街「新天町」
これも建て替えて高層ビルになる...


天神交差点
福岡ビルは姿を消した

かろうじて天神ビルはまだある
昔の天神交差点の面影が残るアングル


3)博多:「博多コネクテッド」

JR博多駅を中心としたオフィス街改造計画。駅を中心にビルを空中回廊で結ぶので「コネクテッド」。まだ始まったばかりで、目立った高層ビルはないが、取り壊しは既に始まっている。駅を起点としたこの整然とした景観が好きなのだが、やがてなくなってしまうのか。


博多駅前

博多駅・JR博多シティー

博多駅線路上に新ビルの建設が始まった

博多駅ビルから博多湾と志賀島が展望できる


博多駅からベイエリアに伸びる大博通り
博多港国際ターミナルと新幹線ターミナルを繋ぐ

建設当時、話題をさらった磯崎新設計のインド砂岩の銀行本店ビル
あっという間に取り壊されてしまい今は更地に。
建築遺産が残らない街だ