今年は夏の猛暑で紅葉が遅いと心配したが、結果的には例年通り十一月末から十二月初旬にかけてモミジ、イチョウが色づき、東京も錦繍の秋を迎えることができた。都内の遅い秋だ。遠くに出かけなくても、ご近所に素晴らしい自然を感じるところがあるのは嬉しい。いつもの日比谷公園にも足を伸ばした。ちなみに乾通りの通り抜けも始まっているが、今年もこちらはパスしてしまい、日比谷から神保町の古書店へ直行。しかし、今回はこのような都会の素晴らしい紅葉、黄葉に感動する一方で、ちょっと気になる事どもを述べてみたい。
かつて広がっていた武蔵野の雑木林がなくなってしまった東京で、自然を感じられるのは主として公園である。それも元は大名屋敷跡であったり、寺社境内であったりする。最近、再開発と称して公園に大きな工事が入り、新たなスポーツ施設やアミューズメント施設が建設されるケースが増えている。神宮外苑の森で問題になっているように、自治体と大手ディベロッパーによるこうした再開発計画が進行しており、何十年もかけて育った樹木の伐採や自然景観を破壊しての工事が強行されていることに憤りを感じざるを得ない。超過密でストレスフルな大都会にあって公園の森は貴重な自然。まさに都会のオアシスである。これだけの森に成熟するのにどれだけ時間がかかっていると思っているのか。経済低迷の日本にあって金を回すためにスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し、再開発と称して都会の貴重な自然を破壊し、歴史的建造物を取り壊し、時間と共に熟成された景観を無惨にゼロクリアーするのは如何なものか。以下に掲載する写真が近未来に、「かつて東京にはこんな美しい紅葉と黄葉に溢れた公園がありました」などという「懐かしの古写真」にならないよう願いつつ。
「その再開発、本当に必要ですか?」
「再開発つわものどもが夢の跡」
日比谷公園(12月3日)
この日本を代表する公園でも再開発と称した建設工事が進んでいる。公園に面した日比谷通り沿いのビルは軒並み取り壊されてしまい、この日比谷公園を含む一体再開発が進行中。早くも見事な花を咲かせてきた名物の薔薇の植栽がなくなってしまった。のっぺりした「イベント広場」と称する「施設」になった。これから次々と「施設建設」が計画されているという。貴重な都心の緑地が失われることがないよう。少なくともこのツルのいる池とモミジ、いちょうの古木は守ってくれ。明治の日本近代化の象徴であった日比谷公園を、「取り壊し」と「建設」の工事を繰り返してしか経済を回せなくなってしまった日本の象徴にして欲しくないものだ。
工事中の囲いが取れたらバラ園がなくなってた! |
12月12日 |
12月10日 |
戸越公園(12月4日)
肥後細川家下屋敷跡を区民公園にした。紅葉もさることながらここでは銀杏の大木と黄色い葉をつけるモミジが圧巻だ。今のところ再開発の動きはないようだ。園内に最近、コミュニティーセンターなる建物ができた。周囲の環境や景観を害するものではないが、何のための施設かわからない。綺麗なトイレに立ち寄って一休みするには便利だが。お役人さまはとにかく箱物を作ることが好きだ。それで何か仕事した気になっている。
12月7日 |
11月27日 |
12月7日 |
12月12日 |
12月7日 |
養玉院如来寺(12月4日)
西大井にある「五智如来」で有名な天台宗の寺院。住宅街の真ん中に異空間が広がる。ここはもちろん公園ではない。東京にも京都のような紅葉で有名な寺院があるのだということが言いたい。流石に大日如来を中心にした金剛界曼荼羅世界に再開発の波を押し寄せまい。仏罰が当たる。
緑陰の散策路は舗装され拡幅され、一見綺麗になったが自然の趣は無くなった |
「桜の広場」の古木は伐採され、新たに苗木が植えられたが、これが育ってあの森になるのにあと何十年かかるのだろう。 |
在りし日の「桜の広場」(2008年3月) 広場を囲む桜の森が伐採されてサッカー場になった |
池田山公園(12月5日)