今年も恒例の下田公園のあじさい祭りの季節がやってきた。「あじさい祭」といっても、派手なイベントや演出があるのではなく、ただただ壮観な紫陽花が主役の祭りである。それが魅力なのである。下田公園は下田湾頭に突き出した小高い山にあり、戦国時代には北条氏の出城があったところ。ここにはペリー来航を記念する「開港記念広場」があり、現在は下田公園として整備されている。その広場の裏山に相当する位置に「あじさい園」があり、全山15万本が群生するという圧巻の光景が広がっている。特に谷を埋め尽くす色とりどりの紫陽花は別世界の花園に迷い込んだような錯覚に陥る。これまでも幾度か訪れたが、いつも梅雨入り宣言にも関わらず晴れという「幸運」に恵まれたが、今回は梅雨ど真ん中、雨のそぼ降る中でのあじさい山散策、紫陽花鑑賞である。朝は霧雨であったが昼前には本格的に降り始めた。振り返ってみると、下田で雨の紫陽花を見るのは初めてである。梅雨時の花なので風情があって良いのでは、という期待もあって、あえて雨予報の日に下田公園まで紫陽花を見に行った。やはり期待通りの美しさであった。
いつもながら、下田公園の紫陽花群生には圧倒される。その15万株という数もさることながら、様々な色と形を楽しませてくれる、その多様性に感動する。ブルーに、ピンク、濃いピンク、シロと、紫陽花は種類が豊富であるとともに成長に応じて色を変えてゆく。日本は酸性土壌なので青になることが多いと言われている。見に来る日によっても印象が変わってゆく。雨に濡れる紫陽花の間に間に見える下田港と下田富士、寝姿山。なんか着流しの演歌歌手が出てきてマイクを持って歌い出すという妄想が浮かんでくる。来訪者の数も雨にも関わらず(平日にも関わらず)の人出である。世の中には粋のわかる人間がまだまだいる。その人気の高さを思い知らされる。「雨に濡れた紫陽花が、瑞々しくい生き生きとしているなあ」と感動の声を上げる人もいれば、いっぽうで「足元がぬかるんで、紫陽花どころじゃないよ〜」とボヤく人も。それもまた梅雨どきならではの紫陽花鑑賞法なのだ。
ずぶ濡れになりながらカメラを向けたが、手に入れたばかりのNikon Z8は信頼感がある。防塵・防滴仕様のボディーはこれくらいの雨ではビクともしない。Durable Dependable Nikon ! 取り回しもよく、24−120の標準ズーム、70−200の望遠ズームが活躍してくれた。雨の中では、やはり晴れのときと違って、全体のトーンが沈みがちであるが、鮮やかな花を見つけて彩りをを添えてみた。紫陽花もそうであるが、雨にけぶる下田港、下田富士、寝姿山の遠景が、この季節をよく表現してくれたと思う。
先程東京へ帰ってきたが、今朝は昨日と変わってカラリと晴れ上がり、快晴。しかも30℃超えの真夏日。このブログをアップする頃には雨に濡れながらの撮影がウソみたいな天気の変わりようで、あのときのしっとりした下田山の雰囲気と脳内イメージが、どこかへ飛んでしまった。それもまたよしとしよう。
晴れの日の下田公園の紫陽花の写真集は、2017年6月19日「下田公園の紫陽花」をご参照あれ。
下田港と下田富士 |
寝姿山 |
「伊豆の踊子」の最後の舞台となった下田港岸壁 |
あじさい谷 |
そして、下田港ペリーロードの紫陽花