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2016年2月11日木曜日

Leica Vario Elmarit SL Zoom 24-90mm f.2.8-4 ASPHという怪物 〜なるほどライカがズーム作るとこうなるんだ!〜

レンズを着けるとボディーが小さく見える


 ライカSLがリリースされてから3ヶ月が経過した。予約入荷待ち状態が解消されようやく市場にブツが流通し始めたようだ。もちろん話題の中心はこのコンクリートブロックのようなミラーレスのSLボディーなのだが、私にとってはレンズが注目だ。何しろライカ初の35mmフルサイズAFズームレンズなのだから。

 ライカMの「ズームがない、寄れない、AFがない」の3無いを解消したレンズ。レンズ内手ぶれ補正つきAFレンズだ。しかしその代償は「でかい、重い、長い」。SLボディーに装着すると重厚長大の超弩級カメラとなる。コンクリートブロックの塊のようなボディーが小さく見える。というわけでとても軽快なスナップシューターには程遠い。しかしそれだけのことはある高性能ズームだ。一見、24-90mm f.2.8-4というスペック的にはよくあるキットレンズに見えるが、その解像度、階調、ボケ味、どれを取っても単焦点レンズに匹敵する性能を発揮する最高のズームレンズに仕上がっている。望遠端が90mmというのも良い。Mレンズ群が苦手とした近接撮影では広角側で30cm、望遠側でも45cmまで寄れるし、フローティング機構により解像度も素晴らしい。歪曲収差はデジタルカメラらしく上手く補正されている(JPGでは全域でデジタル補正。DNGでは24mm付近では樽型に曲がるがADOBE現像ソフトでは自動的に補正される)。これぞ待ち望んでいたライカズームレンズ!

 これまでのライカズームレンズは旧Rマウントシリーズ(一眼レフ)向けのものしか無かった。それも自社製ではなくて日本メーカーのOEM供給品ばかり。その性能も造りもソコソコで、価格もライカにしては安い。それにライカブランドつけて出すんかい?と言いたくなるような代物ばかり。あんまり評判が良いとは言えなかった。ライカはズームをやる気が無い、ということを感じさせたものだった。もっとも日本メーカーの名誉のために言っておくと、それらのOEM 供給各社は、自社ブランド向けには、極めて高性能なズームラインアップを市場投入している。ようは発注側の問題だろう。今回のVario Elmarit SLはドイツのレンズ設計部隊の作品で、かつドイツ製造だ。この少し前にTマウントAPS-Cサイズセンサー用の標準ズーム(28−80mm)を出しているが、こちらは設計はドイツ、製造はまだ日本メーカー(何処かは公表されていないが)。今回SLミラーレスと銘打ってやっと自社製に本気出した。なるほどライカがズーム作るとこうなるんだ!画質を損なわないことにこだわり抜いて設計製造したのだろう。ライカらしく金属鏡胴は気密性も高く防滴防塵。マウント部も少し硬めにキチッと装着できる。約3.5段分の手振れ補正機能を初めて入れた。

 その写りだが、ズームレンズとは思えない先鋭な解像度とアウトフォーカス部のとろけるようなボケ味がこのレンズの持ち味だ。ライカレンズ独特の立体感表現(木村伊兵衛の言うところのデッコマヒッコマ)をズームレンズでどこまで出せるか、という課題への挑戦が実ったということだろう。これならこの一本でズミクロンやズミルクスに肉薄する世界を写し出してくれそうだ。かつての首をひねりたくなるようなズームからは大きく変身。まさにパラダイムシフトした。ここまで来るのにこれだけの時間とコストがかかったということだろう。やはりライカのレンズの味に対するこだわりは妥協を許さないものがある。しかもコスト度返しでそれを追求する。数字上は一見平均的なスペックのレンズであるように見えるが、レンズ硝材やコーティングに贅を尽くし、総金属製の堅牢で巨大な鏡胴をまとい、フィルターサイズ82mmというフロントレンズの口径を誇る。これらはすべてライカテイストの画作りのためだった。

 しかしそれにしても重い。カメラと合わせると2kgになるとは。冗談じゃなく「腕力」をつけておかねばならない。


 (作例)


結像部分はシャープ。背景のボケはメロー。この組み合わせがライカレンズの「味」だ。

水平も歪みがない。隅々までクリアーに写る

かなり意図的なシーンだが階調も豊か

シャドウ部の点光源もシッカリ解像している


不思議な立体感
これが標準ズームの画なのか?!

コントラストを強調