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2015年7月31日金曜日

Leica Q Type116  〜やっと普通のデジカメになったライカ〜


 ライカ社から新製品登場だ。Summilux 28mm f.1.7ASPH単焦点レンズのLeica Q。35mmライカ判の2400万画素フルサイズCMOSセンサー搭載。かなりSONY RX1を意識した作りになっているように感じる。こっちはCarl Zeiss Sonnar 35mm f.2固定。2460万画素フルサイズCMOSセンサー。ライカはなぜ伝統の50mmや35mmでなくて28mmにしたのか? 現代のライカレンズ設計のマイスター、カルべ氏が説明する通り、コンパクトな固定焦点レンズカメラ用に高速f.1.7レンズを選択すると28mmという焦点距離がもっとも適していた、ということだろう。技術者らしい合理的な判断なのだ。さらにクロップ機能で35mmと50mmを選択できるためにもより広角側の28mmがベストなのだと説明している。実際にはSONY RX1を意識して35mm対抗で28mmにするというマーケティング上の理由もあったのかもしれないなどと勝手に推測してみる。

 さあこれでMファミリー向けのプレミアレンズTri Elmar-M 28,35,50mmに匹敵するAFカメラが出てきたと評する人もいる。しかし、光学3焦点をメカニカルに切り替えるのと違い、クロップすると35mmでは1200万画素、50mmでは800万画素となる。あるいは超絶レンズSummilux-M 28mm f.1.4が80万円もする高価なレンズであることを考えると、このカメラの56万円という価格は安い(?!)と絶賛している人もいる。いやはや... ライカの価格評価は常にライカファミリーの他のカメラやレンズとの比較で語られることが多い。ライカは確かに良いカメラだ。特にそのレンズは魅力的で、付き合うにはお金のかかる彼女みたいだけど、別れられない関係になってしまう。いわゆるレンズ沼にズブズブと沈められて行く。世の中には他に魅力的な女性がたくさんいるのに、なぜかライカという「大奥」の中だけで目移りしていると感覚が麻痺してしまう。

 冷静に考えてみると、ライカはなぜそんなに高いのか。理由その1:(人件費が高い)ドイツの職人の手作りだから。理由その2:ふんだんに高価なガラス硝材を用い、鏡胴には真鍮やアルミ素材を惜しみなく用いているから。理由その3:従って堅牢でメンテによりほぼ一生使い続けることができ、市場価値、中古価格が下がらないから。要するに基本性能重視、耐久性重視でコスト度返しで作る手仕事のお道具だから。日本の製造業の「いかにコストを抑えて品質を向上させるか」というモノづくり哲学のようなものが、ライカでは基本的に異なっている。しかし、2、3はある程度理解できるが、1には合理的な理由があるのだろうか?いまやレンズ設計も研磨も、製造もコンピュータアシステッド生産技術で、極めて高品質、高性能なレンズを歩留まりよく低コストで作り出すことができる。日本のカメラ屋さんの得意領域だ。マイスターの職人技にノスタルジックな魅力は感じるが、その経済/技術合理性をもう少し納得できなければなあ。時計の世界で復活してきた機械時計、トゥールビヨンの伝承職人技の高い付加価値。それに相当するレンズ/カメラにおける職人技とは、一体どのようなものなのだろう?メカニカル銀塩カメラでも復活しなくちゃなあ。

 そして、その伝統家内工業的なビジネスモデルへの拘りははたしてデジタル化されたカメラ中心の事業にどのように通用するのか?安くてもよく写る平均的な性能を持ったコモディティー商材化したデジカメの世界に伝統技法を持ち込んで新風を吹き込むことができるのだろうか。残念ながらプログラミングを基本手法とするデジタル技術の世界には、職人の手仕事が生きる余地は少ないように感じる。もっぱらソフトウエアー(画像エンジン)と、センサーやチップセットといった高機能な部材の調達に依存する。LeicaT のように中身はレスポンスの遅い2級デジカメ(失礼!)なのに、銀色のアルミ削り出しボディーは職人の手磨き、などというチグハグな製品が生まれる。

 LeicaQはそういう意味で、やっと普通のデジカメになった。AFの速度も速くなった。手振れ補正もようやく装備された。パナソニックから学んだデジカメの作り方がようやく咀嚼され、生かされた感がする。やっと日本のデジカメ製品に追いついた。画像エンジンMAESTRO IIも最新のバージョンになり、イライラするレスポンスの悪さや、訳のわからないバグ、アンフレンドリーな操作性からようやく解放された。かなりサクサク感が出てきた。それに高性能Summilux 28mm f.1.7ASPHがくっ付いてきて、しかも近接撮影もできるようになった。これは大歓迎だ。嬉しいことだ。しかし、デジカメとしての完成度が高まるほどに、なんか普通のデジカメだなあ。なのに価格だけはライカプライス。やっぱり完全に納得しきれないフラストレーションが残る。

 嫌味な言い方すると、レンズ以外は特筆すべき特色がない感じだ。LeicaQのデジカメとしての完成度は、他社製品に抜きん出る差異化要因にはならないだろう。「普通に追いついた」訳なのだから... 敢えて言えばSONY RX1に対抗できる単焦点コンパクトデジカメのライバル登場だ。RX1には無い電子ビューファインダー(EVF)が内蔵している点が優れている。確かにホールド感もRX1より良い。ライカ独特の「手触りの良さ」は流石だと思う。個人的にはSONY製品一般に言える無理な「小型化」は時にカメラのホールド感を損なっていると感じる。一方、ライカファミリーの中で比較すれば、外見、質感はどちらかというとLeicaXに近く、Mのそれではない。今後、レンズ交換式のAFライカをラインアップするのに備えた試作第1号機では、と勘ぐってみる。だとすると購入は待ったほうがいい。ゆっくりと完成度を高めて行くライカ流ロードマップの一つのマイルストーンなのだ。ともあれSONY RX1のライバル登場だ。どっちが好みか、検討の余地があるだろう。ただしRX1の三倍のプライスを克服できるユーザは、ライカ病患者以外にはいないだろう。

 最後に、毎度のことだがライカの「取扱説明書」、もうちょっとなんとかならないか。ますます分かりにくさが進化している。アブリビエーション/略語が説明されてない。そもそも日本語の訳がおかしいし、アナログで書いてあるので、その章や節の文章を全部読まないと意味がわからない。パワポ使って「ポイントを簡潔にデジタルで書け」と教育を受けてきた会社人間の私など、古代史の論文でも読まされている気分だ。まあ、取説なんか読まないけど、案外、取説の出来が、その会社の製品と顧客にたいする考え方の理解につながるものだ。

Leica Q (Type116)
サイズはXとMの間、
手触りの良さはまさにライカ。
 外見、質感はLeicaXのそれに近い。


マクロで17cmまで寄れる。マクロへの切り替えはリングでセット。
AFとマニュアルフォーカス切り替えもリングでリニアに行える。
この操作感はLeicaのものだ。
(写真はライカ社HPより)

ライバルSONY RX1r+Sonnar35mmf.2
画期的なカメラだ。
Leica Qがターゲットにしたのだろうか?

(写真はソニーHPより)



作例(JPG補正なし):

歪曲収差はよく抑えられている

マクロ撮影

近接マクロでもAFの合焦速度が速くピントもきちっと出てる。

f.1.7開放での撮影。広角でも結構背景はボケる。ライカらしい立体感が出ている。

28mmのパースペクティブで切り取ってみる