なんと開放F値が0.95。ライカのノクチルクスf1よりもわずかに明るい。フィルム感度が上げられない昔は、カメラメーカ各社は明るい開放F値のレンズ(いわゆる高速レンズ)の開発にしのぎを削った。オリジナルのフォクトレンダーのノクトンは1.5だった。アベーラブルライトでの撮影を標榜するライカがノクチルクス0.95を出して世の中をビックリさせた。キャノンやズノーもf1や0.95を出して日本の意地を示した。そこまでではなくてもf2なら普通、f1.8でまあまあ。f1.4は高級レンズ、ニコンのf1.2は高嶺の花、と標準レンズのグレードに関係する数字でもあったのは事実だ。
いまやデジタル時代で撮像センサー感度も上がり、しかも800,1600以上の高感度でもノイズの少ない画質を保証出来るようになった現在、あまり高速レンズのニーズは少なくなり、しかもズームレンズ全盛でせいぜい2や2.8なら明るい方になってしまっている。
しかし、いや、こんなときだからこそ、単焦点レンズでF値が明るいレンズで撮ってみたい、という衝動に駆られる。ここの所にニコンも矢継ぎ早にデジタル一眼レフ用のニッコール50mmf1.4、f1.8を出して来ている。やはり単焦点レンズの歪曲収差の少なさ、ボケ味の美しさが再びマニアにもてはやされている訳だ。
一方、CCDやCMOSセンサーのサイズが通常の35mmフルサイズセンサーに比べると小さい、ASP-Cやマイクロフォーサーズ、さらにはコンデジの1/2、1/1.7サイズでは、美しいボケ(英語でもBokehという!)があまり期待出来ない。そこでこのノクトン25mmf0.95みたいな、マイクロフォーサーズでも美しいボケが楽しめるレンズの登場が歓迎されることとなる。
このレンズは25mmだから35mm換算で50mmの標準レンズだが、最短撮影距離はなんと0.17(17cm)。ここまで寄れる標準レンズは稀だ。ノクチルクスなど1mという遠視(老眼?!)だ。したがってかなりの近接マクロ撮影が可能となる。しかも、この開放F値0.95と近接撮影距離0.17の組み合わせで、今まででは考えられない思いがけない画像表現が可能となっている(とにかく下の写真を見て下さい)。
道具としてのレンズ鏡胴の造りもソリッドで秀逸。ずっしりした真鍮素材に黒鏡胴。ローレットの刻みもエッジが立っていて心地よい。回転トルクが適度にあって,しかも滑らか。絞りリングのクリック感も素晴らしい。絞りバネは10枚で正円に近い。これがボケの美しさを生み出している。なんと言っても外見での一番の魅力は大きな瞳。この瞳に見つめられるとイチコロ。これに付属の金属製の大型フードが付いてくる。
なんともマニアックなレンズだこと。遊べる。
(夜間室内照明下、開放で撮影。アウトフォーカス部分のとろけるようなボケ...)
(昼間室内照明下、開放で撮影。なぞなぞ1:これはなんでしょう?金塊ではありません。)
(昼間室内照明下、開放で撮影。なぞなぞ2:これはなに? これはわかるね。)
(昼間晴天時屋外、絞り2.8で撮影。昼間は開放にするとシャッター速度がついて行かない...)
なぞなぞの答え:1はクチャクチャにしたチョコレートの包み紙。2は机の上のボールペンとポストイット。 以上、わかりましたかな?