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2014年1月16日木曜日

旧前田侯爵邸 〜東京の近代建築を巡る〜

 旧前田公爵家邸宅跡を訪ねた。現在はその広大な屋敷跡は駒場公園となっており、都心では貴重な緑濃い閑静な公園である。英国チューダー様式の洋館(昭和4年竣工)と書院造りの和館(昭和5年竣工)が並立している。和洋並立は明治期以来の大名華族家の邸宅の特色の一つである。洋館の方は関東大震災の後の建築なので鉄筋コンクリート造り。翌年完成した和館は純和風木造建築である。当時は東洋一の豪邸と称されたそうだ。

既知の通り加賀前田家の江戸本邸は本郷にあった。現在の東京大学本郷キャンパス、通称「赤門」のあるところである。その後明治に入り、前田家はこの本郷本邸の土地を東京帝国大学に提供、駒場農学校の土地の一部と交換し、邸宅を構えたのが現在の駒場公園となっている場所である。ちなみに駒場には現在、東京大学の教養学部と先端科学技術研究センター(いわゆる先端研)がある。これらはもともと農学校であったが、後に東京帝国大学農学部となる。さらに本郷キャンパス北の旧水戸邸あとに設立されていた旧制第一高等中学校と交換し、農学部は本郷に、旧制一高が駒場に移った。これが現在の教養学部である。

この建物や加賀前田家については、様々な書籍や案内で説明されているので、ここでの説明の繰り返しは避けるが、興味深いのは、この建物の隣に前田育徳会の建物と書庫がある。特に、ここの尊経閣文庫は日本の古文書、古美術など、国宝、重要文化財の宝庫である。歴史研究でたびたび登場する日本書紀の最古の写本はここに保存されている(残念ながら研究者以外には非公開だが)。前田の殿様は文化芸術の保護、育成、振興に歴代尽くしてきたことは、既知の通りだし、加賀百万石の城下町金沢を訪ねればその馥郁たる文化の香りが街にみちみちていることがすぐに理解出来るが、ここ東京においてもその片鱗を窺い知ることが出来る。関東大震災や戦時中の空襲にも関わらず、また明治維新時の混乱、戦後の混乱の中でもこれらの「文化財」が残ったことは、人類にとっての幸運であろう。これも前田家当主利為侯爵が早くからこれらの文化財を保護するために公益法人を設立して財団に移管し、私有物として散逸を防ぐ努力をしてきたことによる。名家には名家としての文化財保護に役割を果たして来た歴史と、それに伴うなみなみならぬ努力があったことの証だと思う。敬意を表したい。

なお、駒場公園内には日本近代文学館がある。また一角には柳宗悦の民芸運動の拠点、日本民芸館と柳の自宅であった北館がある。散策に楽しみの多いところだ。

目黒区の駒場公園のサイトに建物の詳しい説明がありますのでご覧ください。
http://www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/koen/komaba.html



(チューダー様式の洋館)



(書院造りの和館)



(二階の書斎)



(テラスから庭園を望む)



(階段室のステンドグラス。)


























































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(撮影機材:Leica M240, Elmarit 28mm, Summilux 50mm, Tri-Elmar 16-18-21mm)

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