6月は伊豆下田が紫陽花に埋もれる季節。今年は梅雨入りしたにもかかわらず、快晴の爽やかな日が続く。紫陽花には雨が似合う、とはいうもののやはり晴れるにこしたことはない。ここ下田公園は全山紫陽花に覆われる。いつものペリーロードの川沿いにも見事な紫陽花が。下田は歴史と自然と人情が絶妙にブレンドされたの街なので、「時空トラベラー」の大好きな街トップリスト上位にいつもランクインするのだが、不思議に紫陽花で有名なこの街をその最盛期に訪れたことがなかった。
下田公園は下田市街地の南のはずれにある。海に突き出した小高い山全体が公園になっている。ここは戦国時代には北条氏方の出城、下田城があったところで、豊臣秀吉軍と激戦が繰り広げられた。したがって下田城址公園とも呼んでいる。ペリーが上陸した港から少し坂を上がると開港記念広場がある。この背後に控える山が全山紫陽花山になる。山を覆い、谷を埋め尽くす色とりどりの紫陽花。なんと15万株あるそうだ。一目で「おおっ、すご〜い!」とおもわず感嘆の声を上げてしまう圧巻の光景。東京近郊の有名な紫陽花の名所でこれほどのボリュームと密度を誇るところはあるだろうか。そして一番は人出。いや、すごい人出なのではなく、人影もまばら。広いせいもありゆったりと時間を過ごせることに感動。こんなマッシブなアジサイ山を独り占めに近い状態で堪能できるとは。鎌倉の明月院の紫陽花は2500株だそうだが、紫陽花よりも見物客のほうが多いじゃないかというあの混雑ぶりを考えると嘘のような贅沢さだ。紫陽花の手入れをしてくれている公園管理の人もとてもフレンドリーで、かつ観光地にありがちな押し付けがましくもなく気持ちよい。この景観に感動の声を上げていると、「ゆっくり楽しんでいってください」と声をかけてくれた。聞けばまだ全てが満開ではないそうだ。むしろ満開期よりも、開花間近のの花芽も混じるこの時期が一番フレッシュで、色も鮮やかなのだそうだ。確かに。
ただ、これだけの景観をファインダーで切り取るのは思った以上に難しい。どこを撮れば良いのか、キョロキョロしてしまいカメラが「迷い箸」状態だ。広角で狙うか、望遠でアップするか。快晴なので手前の紫陽花と遠景の下田富士や寝姿山と街並との明暗コントラストが大きく苦労する。遠景に露出を合わせると、花は暗くなり、花に露出を合わせると遠景は飛んでしまう。結局手当たり次第撮りまくって駄作を重ね、そうして選びきれないもどかしさ。圧倒的な景観を目の当たりにして興奮し、視座を失ってしまう。何を表現しようというのか。そこに情感は写し出されているのか。綺麗な花を綺麗に撮ることは、現代のデジタルカメラを持ってすればそれほど難しいことではない。花が綺麗であればあるほど、景色が「すごい」ならすごいほど、そこに何を読み取るのか。まだまだ腕とセンスと選択眼を磨かねば。今回は満足のいくベストショットがない。
いくつかのショットをご紹介。まずはペリーロード沿いの紫陽花
次は、いよいよ下田公園の紫陽花たち
開国記念碑 |
寝姿山遠望 |
下田港 |
下田富士遠望 |
(使用機材:Leica SL + Vario Elmar 24-90)