富士フィルムの高級コンパクトXシリーズの第2弾、X10が発売になった。35mm単焦点レンズのX100が出た時に,次はズームか?と噂されていたものが、年内に出た訳だ。X100は発表から話題を呼び、一時は在庫不足でウェイティング状態だった。この成功に富士フィルムも意を強くしたのであろう。このようなきちんとしたカメラ造りはなかなか商用化しにくいものだが、経営陣の決断と,ユーザのサポートによる市場形成の成功をカメラファンとして多いに喜びたい。
さてX10の主な特色だが、
1)28ー112mm相当の光学4倍ズームレンズを搭載。Fujifilmが誇るSuper EBCレンズである。f値2.0〜2.8の明るさ。全域で優れた解像度を実現。
2)コンデジによくある電動ズームではなく手動でズーミング。金属カムによるスムーズで確実なズーミングが可能に。往年のコンタックスフィルムコンパクトを彷彿とさせる。
3)2/3サイズの1200万画素EXR-CMOSセンサー採用。フォーサーズより小さく、高級コンパクトが採用している1/1.7よりは大きなサイズ。ちなみにX100はASP-Cサイズである。
4)ボディーは黒一色で、X100と同じ形状デザインを踏襲しているがサイズは一回り小さい。軍艦部もX100を引き継いでいる。天板、底板にマグネシウム合金を使用し、剛性感、重量感ともに他と一線を画す手触りとホールディング感を実現。
5)ファインダーはガラスプリズムを使用した本格的な高倍率光学ズームファインダーを採用。ただし、OVFのみで、撮影情報表示はない。X100の特色であったOVF,EVFのハイブリッドファインダーは搭載されていない。
6)液晶モニターは明るくクリアーで見え方は抜群。
7)シーンに最適なモードを自動選択するEXR設定が出来る。
8)X100同様、フィルムシミュレーションモード搭載。さすがフィルムメーカーのカメラ造りだ。
手動ズームはスムースかつ確実。操作性に信頼感を感じる。また、ズームリングを28mmに回す事によってカメラの電源ONとなる。この辺の使用感は抜群で,カチッとした確実性が伝わってくる。
ボディーサイズも、大きすぎもせず、小さすぎもせず、丁度手に収まる。一般的なコンパクトデジカメはそもそも小さすぎて扱いづらい嫌いがあるので、このくらいのサイズはうれしい。
金属削り出しのリング、ダイアル類のクリック感もいい。不用意に動いたりしない。X100は露出補正ダイアルや電源スイッチがいつの間にか動いていて慌てる事があった。
レンズの解像度はなかなか素敵だ。全域で素晴らしい画を楽しむことが出来る。センサーサイズに限界があるので、ボケには少々不利だが、明るいレンズなので望遠側でのポートレート撮影や、マクロではまずまずの結果を得ることが出来る。また、ズームレンズにありがちな樽型、糸巻き型の歪曲も少なく、周辺光量不足も少なくて単焦点レンズに匹敵する性能をたたき出している。マクロモードは通常マクロの他、1cmまで寄れるスーパーマクロも使えるのがいい。
ちなみに、このX10から富士フィルム社製のデジカメブランド名、FinePicsを使用しなくなった。新しいXシリーズのスタートという意味合いを持たせるつもりなのであろうか。なんとなくパッと見ると、X10、X100は10倍、100倍に見えてしまうが...
このごろの富士フィルムはなかなかマニアの心をくすぐる高品位なデジタルカメラを出してくる。これからも楽しみだ。しかもMade in Japanという信頼感を前面に出して。最近の他社のミラーレスやコンパクトはみな中国製やタイ製。時代だから仕方ないのだろう。しかし、いまや80%程の製品の製造をタイに依存しているニコンはこのたびのタイの洪水でヒヤリとした。幸いミラーレス新製品のニコン1は中国で製造していたので、タイで製造しているソニーのNEX-7のように発売延期の憂き目を見なくて済んだのだが...
話がそれたが、ともあれX10はいいカメラだ。小気味の良いワクワクするようなカメラだ。何処へでも持って歩きたいハンディーさと質感、適度な重量感。ひょっとするとX100より使い勝手の良い小粋なカメラに仕上がっているかもしれない。予約しておいたので,発売とともに一番にゲット出来た。デジカメもようやく高品位な製品が市場に登場するようになり、家電製品化からの脱却に向い始めた事はうれしい。
(早速、神戸北野の異人館街散策でデビューしました。まずは作例をごらんあれ)
(通常マクロで撮影)
(スーパーマクロで撮影)
(望遠側で撮影。画質劣化は見られない)
(28mmで撮影。屋内でも諧調がしっかりしている)
(28mmで撮影。歪曲は少ない。)
(Lumix DMC-LX5で撮影。ブツ撮りがヘタクソでスミマセン...)