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2023年9月8日金曜日

Leica Q3登場 〜三代目Qはどのように進化したのか〜

Leica Q3 ハンドグリップとワイヤレス給電ベース


2015年の初代Qに始まり、2019年のQ2、そして今年のQ3。ライカQシリーズは三代目となった。こうしてみるとQは4年毎に新機種を出している。このQシリーズは、当初の思惑と異なり、ライカ社としては思いがけず(?)ヒット商品となり、最近にわかに生産と販売に力を入れ始めたようだ。当初はソニーのRXシリーズのコンセプト、高品位単焦点レンズコンデジ、を追いかけているように見えたのだが。ソニーの方は、その後コンデジからは引き気味だというのに。ただ、Q3も相変わらず、生産が追いつかず、発売開始後もバックーオーダーを抱え、なかなかユーザの手に渡らない事態が起きている。量産体制を取らない、海外生産にも頼らないい、ドイツのマイスターによる手作業生産を売りとするライカにとってはジレンマだろう。結局、2023年6月3日の発売開始からようやく8月31日になって予約していた客の手元に届き始めたようだ。それでもこれは早い方だ。ライカ社のHPでは「長い間お待たせすることを予めお詫び申し上げます」とある。ライカショップに聞いても「入荷時期は未定としか言いようがない」という。ライカ社お得意の「人気沸騰」「順番待ち」戦術ではあるが、今回は必ずしも「マーケティング戦術」と言い切れない事情もあるようだ。発売価格はQが56万、Q2が66万であったが、Q3は88万に!先述のごとく、量産化体制を取らず、出荷台数が日本のカメラに比べると限られているとは言え、こんな高額カメラに注文が殺到する状況には考えさせられるものがある。量産体制、手作り体制、どちらがこれからの「ものつくり」で成功者になるのだろうか?ハイエンド機に特化した高級路線のライカ社にとって、今後、Qシリーズをどのような位置づけにしようとしているのだろうか。


Q2から何が変わったのか?

 1)6030万画素CMOSセンサー (Q2は4730万画素、Qは2600万画素)。解像度を6030万、3000万、1200万と選べる

2)画像エンジンはMaestro IV (Maestro IIIから進化)

3)LCD 3インチTFT チルト式をライカとして初めて採用

4)EVF 5.76mp (Q2の3.68mpから)SL2並の解像度

5)ISO 50-100,000 (ISO 50−50,000)

6)AF コントラスト+位相差 となり高速+正確

7)クロップモード(いわゆるデジタルズーム) 従来の28/35/50/75mmに95mmが加わった

8)バッテリー 大容量化

9)コードレス充電(ハンドグリップ+専用ベース経由で)が可能に

10)HDMI+UBS-Cポート追加 PC給電と画像転送が可能に また、スマホとの画像転送が高速化

11)動画Video 8K追加


初代のQ以来、外形はほとんど変わらない。特に正面は全く同じ顔をしている。背面が少しレイアウトが変更され、LCDがチルト式になったことと、ボタン配置が右寄りに集約された。側面にUSB-Cポートが設けられた。バッテリーが大容量になり、コードレスチャージができるのは便利だ(ただし専用ハンドグリップ+専用ベースが必要)。レンズは全く変わらず。マクロモードも継続されている。防塵防滴、手ぶれ補正も変わらず。したがって、大きな進化ポイントは、6030万画素とAF性能の向上(正確+速度)につきる。

Q3は「買いなのか?」。高画素化はmake senseなのか?ストリートフォトには最適。マクロモードがあるのでテーブルフォトにも有効。スマホカメラがが高性能化し、写真といえば「インスタ映え」に代表されるスマホという時代に、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)、ポイントアンドシュートの存在意義を問うカメラというわけだ。ライバルはスマホであり、ターゲット層はスマホユーザなのだろう。事実、コンデジの出荷台数はここ数年激減状態。ライカ社も2015年にQを発表した時点では、コンデジの市場縮小を見て、Qの将来性を疑問視していたようだ。しかし、最近ではこのスマホで写真に目覚めた若者を始め、「新しいフォトライフ」市場が生まれ、そのなかから、写真表現の幅を広げ、本格的な作品創りへの移行、そしてより良い(高品位)カメラを求める層が出てきている。時代は巡る。一眼レフ型ミラーレスが人気で、Nikon Z8の人気に見られるように出荷台数が急増している。そういう、「時代が巡ってまいりましたぞ」というタイミングでのQ3の発表だ。それにしてもコンデジとしては半端な価格ではない。どうせカメラ買うなら高級なハイエンド機を!ということなのだろうか。誰もが買えるカメラではないはずだが。日本の製造業が得意な、「安くて高性能」な「量産機」は、商売にならない時代になったのか。皮肉なものだ。

それにしても、ついに6000万画素超えだ。これ以上の高画素化は不要、という人もいるが、撮影後のポスプロを考えると、一画面あたりの情報量が多いほうが有利だ。加工しても劣化しないメリットは大きい。ダイナミックレンジ、解像度が向上したメリットは否定し得ないだろう。表現の自由を広げるポスプロを前提として作品創りするなら、低画素でダイナミックレンジ、解像度に限界のあるスマホは選択肢に入らない。日常スナップ、記念写真や自撮り、インスタ映えならOKでも、写真にこだわり始めると物足りなくなる。もちろんその分、膨大なデータ量を扱える処理能力の高いPCやタブレットが必要になる。ストーレージもFlickerやGoogleフォト、Amazon Drive Photosは対応可能だが、SNSではインスタグラムは画素数を落とさねばアップできず弾かれてしまう。最近は静止画モードに加えて動画モードがワンセットになっている。一機材で静止画・動画の垣根を超えた表現も可能な時代(これもスマホの影響?)。表現の多様性化トレンドは止まらない。





以上の写真は、ライカ社のHPから引用


Leica Q3での作例:



マクロモード



マクロモードでの接写





クロップ50ミリ

マクロモード
クロップ75ミリ

マクロモード
クロップ90ミリ
LRで明暗とコントラスト加工しても劣化は見られない

Videoモード


参考過去ログ:

2019年5月20日 Leica Q2登場

2015年7月31日 Leica Qデビュー