ページビューの合計

2011年4月10日日曜日

Fujifilm Finepix X100 レンジファインダーデジカメのあるべき姿?

 開発段階から話題になっていた為、発売開始以降ずっと品不足であったX100。その品不足にさらに拍車をかけたのが、東北地方の大震災だ。生産停止に伴う供給不足が続いていたがようやく生産再開とか。グッドニュースだ。それでも予約販売でなかなか入手困難。そんななか、一足早くマップカメラで限定入荷品をゲット出来た。予約もせずにゲット出来たのは幸運。

 インプレッション,気付いた事を思いつくままに:

 「高品位カメラ」をうたっているが、サイズ、見かけは、往年のフィルムコンパクトカメラ。キャノネット、コニカ、ミノルタハイマチック、ペトリ35などを彷彿とさせる。あるいは一世を風靡したコンタックスG1、2にも通じるものもあるが、基本的には良く写る普及型コンパクトカメラといった印象だ。

 しかし,デジタル全盛の今の時代に登場してくるとなかなかユニークなポジションに位置する。デジイチ、コンデジとは全く異なるジャンルを作り出した感がある。画質はデジイチ、コンパクトさはコンデジのそれ。しかも絶滅危惧種のレンジファインダー付き。ある意味ライカの良いライバル、あるいはライカの進化の方向を示すプロトタイプとなっていると思う。

 マグネシウム合金製のボディーで、ロゴマークがきちっと刻印されている。軍艦部はシルバーの荒めのメッキ仕上げ。もう少し梨地のきめが細かければライカの高級感に近づいたかもしれない。しかし,持って歩いているとなにか意外に高品位な姿を垣間みる事も出来る。特に専用の切りかき付きのフードを装着すると一段と「出来る」カメラに見える。なにか不思議な雰囲気を持っている。正面からだけ見ていて感じるどうも安っぽい(失礼)雰囲気だ。正面の内蔵ストロボによるものだと思う。これは要らないな。

 X100はさすがフィルムメーカ大手の富士フィルムが手がけたデジカメだけあって、往年の「カメラ」の雰囲気を大事に再現している。確かにあの頃の「コンパクト35」カメラと並べてみると、同じ匂いがする。その手触りと金属感触も我々の年代にはなじみの感触だ。しかし、よく見ると,その外見とは別に、カメラはここまで進化したと感じさせる仕上がりとなっている事に気付く。

 撮像センサーは通常のコンデジのような小さなものではなくAPS-Cサイズのデジイチ用を装備しているから、画質は良い。フィルムモードを選択出来るのが富士フィルムらしい。プロビア、ベルビア、アスティア、モノクロを選択出来る。

 レンズはフジノン23mm F.2固定。35mm換算で約35mmの広角で使いよいサイズ。最短撮影距離は80cmとちょっと物足りないが、マクロモードで10cmまでよれるのでこれはいい。開放マクロでは少しフレアーがかかり、かつてのズミルクス35mmの開放撮影時のようなふんわりした感じの画になる。レンズフィルター径が49mmで、あの頃のコンパクトレンズシャッターカメラのコパルやセイコーのシャッターユニット使用のレンズ共通の49mmののフィルターがそのまま使える

 最大の特徴であるハイブリッドファインダーであるが、光学ファインダー(OVF)では当然ながらパララックスが生じるが、これを補正する機構はついていない。近接撮影などでは電子ファインダー(EVF)に切り替わるようになっており、ハイブリッドファインダーのメリットを最大限生かしている。OVF, EVF,液晶モニター撮影の切り替えはマニュアルでは勿論の事、ファインダー脇のセンサーで顔を近づけると自動切り替え出来るほか、正面のレバーで切り替える事も出来る。レンズシャッター機であるが、スイッチオンでシャッターが開きTTLでのEVF、液晶モニターでの画像確認が出来る仕掛けとなっている。

 ハイブリッドファインダーはレンジファインダー機の向うべき方向を示しているような気がする。よく見えるファインダーは写真の写し手の感性を刺激する重要な仕掛け。最近のコンデジがファインダーを廃止しているのは寂しい。かといってフォーサースのようにEVFだけだとなにかすっきりしない。OVF, EVFそして液晶画面の3種類を切り替えて自在に使える,という事が新しいデジタルカメラのジャンルを作り出している。特にライカのようなレンジファインダー機のデジタル化の方向を示していると思う。同様にバックの液晶の画質も重要。ライカのそれはあまりにもお粗末。今の普及型のデジカメの水準と比較しても取って付けたようなオマケ液晶だ。感性を刺激しない。

 シャッターダイアルは軍艦部にあり、フォーカルプレーンシャッター機のレイアウト。クリック感もあり好ましい。また、同じ平面に位置している露出補正ダイアルは良い。ただ知らないうちに動いている事がある。

 気になるのは、電池がガタガタすること。また挿入方向が間違っててもカチッと収まるのは如何なものか。時々スイッチオンで起動しないのはこのせい?だとするとこれはチとお粗末過ぎる。

 とにかく、富士フィルムらしい,古くて新しいコンセプトのカメラが出た事は歓迎だ。もともとフィルムメーカーらしくカラーマネジメントのノウハウをしっかり蓄積して来ただけに、その発露であるFinepixシリーズの発色、画造りは好きだ。家電化するデジタルカメラに飽き飽きしていた私には写真の楽しみがまた広がった。




(往年のフィルムコンパクトカメラと比べてみて下さい。すっかり溶け込んでるね。それにしてもあの頃のコンパクトカメラの完成度の高さを改めて認識。)




(折しもサクラが満開。ベルビアを選択して鮮やかな一枚を楽しむことが出来る。花曇りでハッキリしないコントラストでもこの鮮明度がたまらない。フィルム時代から好きな発色だ。こうしたシチュエーションでも10cmまで寄れるのがうれしい。)